企業のIT部門はいかにあるべきか

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2015年に出版した
『業務効率UP+収益力UP 中小企業のシステム改革』幻冬舎 (2015/9/18) より
書籍内のコンテンツをタイトルごとに公開いたします。

コンテンツの最後に、コンサルタントのコメントを追加しておりますので、合わせてご覧ください。


P.220~

第5章
業務の実態に合わせたシステム運用が、企業成長の絶対条件

企業のIT部門はいかにあるべきか

企業のITガバナンスがいかにあるべきか、アメリカに本部がある情報システムコントロール協会(ISACA)などが提唱するフレームワークをCOBIT(Control Objectives for Information and related Technology:コビット)と呼びます。

COBITによれば、企業は「アプリケーション(ソフトウェア)」「インフラストラクチャ(端末やネットワーク)」「情報(データ)」「要員(IT担当者)」などのIT資源を有効に利用するために、「計画と組織」「調達と導入」「サービス提供とサポート」「モニタリングと評価」の四つの視点を持ち、ビジネス目標を達成しなければなりません。

しかし、現在のS社のシステム担当者の作業内容は「サービス提供とサポート」および「調達と導入」の一部にとどまっており、「計画」や「モニタリング」はほぼ行っていないと評価するしかありません。

S社のシステム部門の名誉のために言い添えるならば、たいていの中小企業のシステム部門は似たようなものです。「計画や組織作り」「モニタリングと評価」をきちんと行えているシステム担当者などほとんどいません。

その理由は、日本の中小企業においてシステム部門が軽く扱われていること、十分な予算も人員も与えてもらっていないことが挙げられます。つまりは経営者の責任であると言えます。

実はS社の取締役は「だったらITシステム担当者なんて不要だろう」と、情報システム部門を解体して、そこにいた3名を転属させようと考えていました。

しかし、システム部門が機能していないことと、システム部門が不要であることとはイコールではありません。また「企画」をできなかったにしても「サポート」もシステム部門の重要な業務であることにはかわりありません。私たちはシステム部門の必要性を力説し、結局、情報システム部こそ解体されましたが、ITシステム担当者は経理・管理部門の中にシステム担当として居場所を与えられることになりました。

ITコンサルタントのコメント(2023年6月30日)

「日本の中小企業においてシステム部門が軽く扱われていること、十分な予算も人員も与えてもらっていないことが挙げられます」
と述べています。

では、現在のシステム部門の状況はいかがでしょうか。

「全国情シス実態調査 2021 集計レポート 株式会社インターネットイニシアティブ」より抜粋

  • 人数: 100人未満規模の企業では、約4割が情報システム部門の人数が1人。(相変わらず人数は少なく見受けられる)
  • 人員方針: 人員を増やす方針は22.3%、現状維持は約44.9%。(人員を増やそうとしている企業は全体の約1/5に止まる)
  • 課題:上位は人材不足、人員不足。「次世代を担う人材がいない」「経営陣がITに興味がない」なども上がる。

残念ながら、あまり変わっていないように見受けられます。

企業のDX推進が叫ばれて久しい昨今です。情報システムの利活用が企業の今後を左右しかねない時代となり、情報システム部門、IT担当者の役割も重要性を増しています。ここで述べた「計画や組織作り」「モニタリングと評価」の必要性は変わりません。より重要度を増していると言えるでしょう。

しかし、これらは単純にIT技術者を増員すれば行えることではありません。「計画や組織作り」「モニタリングと評価」は、「調達と導入」「サービス提供とサポート」といったITの開発や運用に基づく業務とは若干異なるのです。経営やコンサルティングに関わる知識体系や経験が必要で、一朝一夕に取り組めることではありません。

そのような業務にITコンサルティングを活用するのも、選択肢の一つです。外部コンサルタントと「計画や組織作り」「モニタリングと評価」に取り組み、業務フローや考え方を確立し、社内IT担当者も経験を積んでいくのです。先々自らで計画・評価を行う礎となり、情報システム部を強化する近道となるはずです。


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