業務の仕組み全体がシステムである

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2015年に出版した
『業務効率UP+収益力UP 中小企業のシステム改革』幻冬舎 (2015/9/18) より
書籍内のコンテンツをタイトルごとに公開いたします。

コンテンツの最後に、コンサルタントのコメントを追加しておりますので、合わせてご覧ください。


P.92~

第3章 ベンダー任せにするな。改修の成否は「業務プロセス」の徹底的な洗い出しで9割決まる

業務の仕組み全体がシステムである

ITシステムと言われて「ああ、それってビジネスに欠かせないよね」とすぐにうなずかれる方はどれくらいいるでしょうか。

ここに、一般社団法人 電子情報技術産業協会(JEITA)が、従業員300人以上のグローバル企業410社に対して、2013年に行った調査の結果があります。企業の内訳は、日本企業が216社、アメリカ企業が194社です。

このうち、ITシステム投資を「極めて重要」と回答したのは、日本企業では約16%でしたが、アメリカ企業では約75%もありました。また、今後のIT予算を「増える」と回答したのは、日本企業では約40%だったのに対し、アメリカ企業では約80%もありました。

つまり、日本企業はアメリカ企業に比べると、ITの重要性を軽視し、IT投資にお金を割かない傾向があります。その結果が、グローバル市場における日米の企業の力の差となって表れていると感じるのは私たちだけではないでしょう。

私たちは、日本企業の経営者の能力が劣っているとは思いません。というより、日本企業は社員の能力は高いのに、ITに対する理解の差や、活用度の差によって、競争に負けているのではないかと考えています。

そもそもITとは何か。ITシステムにはどのような効果があるのか。すぐに答えられる経営者の方はどれくらいいらっしゃるでしょうか。

一つの例としてITシステムをひとことで表現するのであれば、「業務効率を改善するものである」と言えます。

たとえば、月次の販売額を集計するとき、経理マンを3人使って、人海戦術で計算と検算を行わせて、間違いのない帳票を作成するよりも、システムを使って集計させたほうが、はるかに効率がよくなるでしょう。

伝票の数字を入力するだけで、後はすべてシステムが計算して、結果を吐き出してくれるのですから、これほど効率が良いことはありません。経理マンが3人必要になることもなく、入力作業を担当するオペレーターが1人いればいいだけになります。

将来的には、スマホの移動履歴から社員の日報が自動的に作成されたり、製品につけられたICタグを読み取って自動的に配送が行われたり、いちいちキーボードを叩いての入力すら必要なくなるかもしれません。

このように、業務効率を明らかに向上させるものを、私たちはシステム(仕組み)と呼んでいます。ですから、零細企業にとっての弥生会計や勘定奉行などの会計ソフトも、もちろんシステムの一種です。

また、個人事業者が、会計ソフトウェアなどを持っていないために、オフィスのエクセル(表計算)ソフトで会計をしていたとしたら、それも立派なシステムです。

さらに言えば、たとえITを使っていなくても、トヨタ自動車の有名なかんばん方式のような業務効率を上げるための仕組みであれば、それもまたシステムと言ってよいでしょう。

要するに、業務効率を高めるための仕組みは、大なり小なりシステムと言っていいわけです。そして、システムを利用した結果として、人を2人雇わねばならない業務が1人で済むようになったとすれば、明確な経費削減(コストダウン)になります。

あるいは、業務効率を高めて、従来は1カ月かかっていた製品が2週間で作れるようになり、その結果、売上が伸びたとすれば、それもまたITシステムの効果に換算できるでしょう。よくITシステムの効果として、経費削減や売上向上が挙げられることがあります。また、利益管理や在庫管理といった管理水準の向上も、もちろんシステムの効果の中には含まれます。

しかし、第一の目的はあくまでも業務効率の改善です。このように定義することで、わかりにくかったシステムがぐっと身近になります。

 

ITコンサルタントのコメント(2022年06月11日)

現在、ITシステムの目的は、企業内部の業務効率改善だけでなく、外向けのビジネス用途へ広がり、重要性が更に増しています。

(例)

  • 市場・顧客行動の分析強化
  • 市場・顧客変化への迅速な対応
  • ビジネスモデル変革

さて、日本企業のITに対する理解の差や、活用度の差によって、アメリカ企業との競争に負けていると指摘していますが、重要度が増した現在はどうなっているでしょうか。

JEITAが、従業員300人以上の民間企業644社に対して、2020年に行った調査の結果があります。(内訳は、日本企業が344社、アメリカ企業が300社)

今度は、IT予算の増減見通しに大きな違いはありませんでした。
一方で、アメリカ企業ではDXの取組に経営層の54%が「積極的な関与」をしているものの、日本企業では36%で、48%が「提案の承認」という違いがありました。

日本企業のITへの理解は進みましたが、経営層の関与状況には違いがあり、その結果が依然として企業の力の差となって表れていると感じます。

経営層がより積極的にITシステム投資やDXの取組に関与し、競争力の高い日本企業が増える事を切に願います。


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