新技術は高価なわりに障害だらけ

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2015年に出版した
『業務効率UP+収益力UP 中小企業のシステム改革』幻冬舎 (2015/9/18) より
書籍内のコンテンツをタイトルごとに公開いたします。

コンテンツの最後に、コンサルタントのコメントを追加しておりますので、合わせてご覧ください。


P.70~

第2章 場当たり的なシステム改修は、お金と業務の「ムダ」しか生み出さない

新技術は高価なわりに障害だらけ

ITシステムを新しく導入するときには、どうしても新しい技術や機能に目がいってしまうものです。特に「クラウド」であるとか「ビッグデータ」であるとか、IT業界で流行しているバズワードがあれば、それを試してみたいと思ってしまうのが人情です。しかし、大企業の先端技術研究部門にいるのであればともかく、中小企業がビジネスユースでITシステムを入れるのであれば、絶対に新しいものには飛びつかないようにしてください。

ハイプ・サイクルの図(P27)で述べたように、IT業界において、新技術は、常に過大評価を受ける傾向があります。しかし、5年後、10年後から振り返ってみると、当初の評価どおりに世の中を動かした技術など、ほとんど存在しません。

新技術というものは、高価なわりには未成熟な製品が多く、使うのが難しいか、実用性に欠けていることが多いものです。

「パソコンを買うときには新製品ではなく、ワンシーズン前の製品を狙え」という言葉を聞いたことはないでしょうか。その理由はいくつかあります。

第一に、パソコンというものはすでにコモディティー化していて、どれを買っても似たようなものになっています。新製品だからといって、特別に何かがすごいわけではありません。

第二に、新しいことに価値がおかれがちなIT業界においては、新製品の価格と、ワンシーズン前の製品の価格とに、性能以上の差がつきます。コストパフォーマンスから考えれば、ちょっと古い製品を買ったほうがよいのです。

第三に、パソコンに限った話ではありませんが、初期ロットには不具合が多く、回収騒ぎやファームウェアのアップデートなど手間がかかりがちです。

特に、ソフトウェアにはバグがつきものです。ITシステムも、新機能や流行の技術に目を奪われることなく、登場してから日が経っていて品質や性能の安定している製品を利用するように心がけましょう。

もちろん、新技術や新機能は魅力的です。新しい技術で「これができる、あれができる」とうたわれれば、使ってみたくもなるでしょう。しかし、そもそもその機能は、本当に皆さんの会社に必要なものでしょうか。

『日経SYSTEMS』や『日経コンピュータ』などに、企業が新しい技術やITシステムを導入したケースがときどき掲載されていますが、いずれも大企業の事例です。大企業は宣伝効果も見込めますし、そもそも社内のIT技術者のモチベーションアップもあってやっているのでいいのですが、中小企業が新技術を導入しても、使いこなすのに苦労するばかりです。

ITシステムやソフトウェアを選ぶ場合は、必ず使い古されて安定している技術、なおかつ市場に幅広く受け入れられているベストセラー製品を選んだほうがよいでしょう。ITシステムの導入には失敗が多いので、技術の目新しさは二の次でとにかく実際に使えるものを選ぶべきなのです。

ITコンサルタントのコメント(2022年4月26日)

最新技術でなくとも、「これができる、あれができる」と巧妙にうたわれてしまうと、そのITシステムを導入さえすれば課題が解決されると錯覚してしまうかもしれません。また、現在では様々なクラウドサービスが提供されており、始める・やめることが容易になってきています。「とりあえず使ってみよう」ができる時代においては、技術先行で考えるケースがあることも否定できません。

しかし、「何がしたい・どうなりたい」を描くのはITシステム導入プロジェクトにおける基本中の基本であり、それは今までもこれからも変わりません。また、自社のリソースやスキルなどの現状を踏まえたときに「どこまでできるのか」の見極めも必要です。

本コンテンツの最後にある「とにかく実際に使えるものを選ぶべきなのです」に凝縮されているように、自社の課題解決にフィットするもの、そして自社でしっかり使いこなせるものを、余計な情報に惑わされずに選んで下さい。すると案外、使い古されている技術や、既に市場に浸透している製品・サービスでも十分であることに気付くはずです。そうした製品・サービスは事例やノウハウも豊富なので、導入・運用定着にかかる期間短縮も期待できます。


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