メーカー主導で見直しを迫られる

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2015年に出版した
『業務効率UP+収益力UP 中小企業のシステム改革』幻冬舎 (2015/9/18) より
書籍内のコンテンツをタイトルごとに公開いたします。

コンテンツの最後に、コンサルタントのコメントを追加しておりますので、合わせてご覧ください。


P.35~

第1章 ソフト更新、業務フロー変更  ── 絶え間なく見直しを迫られる社内システム

メーカー主導で見直しを迫られる

オープンシステムは、ユーザー企業にとっては良いこと尽くしのようでしたが、実際はさまざまな問題が起こりました。

第一に、適合性の問題です。汎用的なシステムは、オーダーメイドのシステムに比べて、個々の企業の業務に合わせたカスタマイズができにくくなります。

もちろん、パッケージもカスタマイズできますが、それなりにお金がかかってしまいますし、そもそもカスタマイズを事実上禁止しているシステムもあります。
パッケージ・ソフトウェアは安価な分、使い勝手に関してはレガシーシステムに一歩譲ることになってしまいました。

第二に、システムの寿命が短くなってしまいました。

レガシーシステムの場合は、世界に一つだけしかないのですから、メーカーがメンテナンスとサポートを続けてくれる限り、半永久的に使用することができました。

ところが、パッケージ・ソフトウェアの場合は、メーカーが勝手にバージョンアップをしてしまいます。古いバージョンのまま使い続けることもできるのですが、旧バージョンは、何年か経つとメーカーがサポートを打ち切ってしまいます。そのため、どうしても一定期間でシステムを更新する必要が出てきます。

パソコンでたとえると、WindowsXPに何の不満もなくても、マイクロソフトがサポートを打ち切った時点で、新しいOSに乗り換えねばならなくなることと同じです。実際、オープンシステムにおいては、サーバーや端末にWindowsが使われることが多いため、マイクロソフトのバージョンアップに振り回されることになります。ソフトウェアメーカーが、バージョンアップを行うのは、何も利益を追求するためではありません。IT業界の技術革新は激しく、当時は最新のシステムであっても、数年経つとあっという間に技術の陳腐化が起こります。

私自身、40年近くをIT業界で仕事をしてきましたが、その間にどれだけの技術が生まれて廃れてきたかを振り返ると、隔世の感があります。

プログラムの基本となる言語も、新しい言語ができては消えていきました。ですから、古いシステムは、そのプログラム言語を理解できる人が少なくなりすぎてメンテナンスが覚束ないのもたしかなのです。

とはいえ、オープンシステムの時代になって、ハードウェアもソフトウェアもレンタルや使い捨てが当たり前という意識が出てきたことにも違和感はあります。

今や、ITシステムは5?7年で入れ替えることが当然となってしまい、それを前提に、使い捨てのシステムが量産されています。

中には、駄目になったらどうせ新しいシステムに入れ替えるのだからと、仕様書すらろくに書かないソフトウェア開発会社もあります。「安かろう、悪かろう」がまかり通ってしまうのも、オープンシステムの弊害です。

大型汎用機(メインフレーム)を使ったレガシーシステムの時代には、発注をするメーカーを信頼して任せていれば良かったのですが、さまざまな汎用品を組み合わせるオープンシステムの時代には、ユーザー側の担当者の責任が重大になりました。経済的で使い勝手の良いものを選んで組み合わせる必要があるのですが、専門的な知識を持っていないとなかなか難しいのです。

ITコンサルタントのコメント(2022年1月26日)

「第一に、適合性の問題です。」
「第二に、システムの寿命が短くなってしまいました。」
これらは、クラウドサービス利用が主となっている現代の方がより顕著になっています。
さらに、クラウド時代への変化と共にシステムやサービスの“細分化”が進みました。

「業務毎に個別最適化・個別最適を疎結合して全体最適化」の傾向は以前からありましたが、システムやサービスの細分化により、現代では「個別最適」の単位がより細分化されています。
適合性・システム寿命の問題が顕著になるだけでなく、各社が利用するクラウドサービス・メーカーの「数」も絶対的に増えたということです。

「さまざまな汎用品を組み合わせるオープンシステムの時代には、ユーザー側の担当者の責任が重大になりました。」
と書かれていますが、この比重は大きくなる一方です。
安く・早く導入できるクラウドサービスはミクロ視点ではメリットも多いですが、導入・離脱サイクルの早いクラウドサービスの数が絶対的に増えることは、「個別最適を疎結合して全体最適化」を実現し維持する難易度を大きく上げます。

ユーザー側の責任と役割の変化を理解し、いかに適応していくか、重要なテーマです。


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