コラムカテゴリー:AI, DX(デジタル・トランスフォーメーション), ITコンサルティング, 情報戦略/業務改革
記事の執筆
システムコンサルタント関根 真悟
中小企業の支援に関わる業務に関心があり、前職の経験を活かしシステム面から中小企業の支援を行うために、青山システムコンサルティングに入社。 前職はネットワークの設計・構築を行う部署で自身の持つの知見を活かし、DC移転プロジェクトやネットワーク機器更改プロジェクトの成功に貢献。 現在は、経営者と作業者の視点を意識した第三者の目線でコンサルティングサービスを提供している。
「会社が求める人材が来ない…」
「それどころか求人を出しても応募すら来ない…」
「ベテラン社員が退職したら現場が回らなくなる恐れがある…」
こうした悩みは、もはや一部の企業だけの問題ではなく、日本中のあらゆる企業が直面している経営課題です。
人口減少が加速する日本において、労働力不足は一過性の課題ではなく、今後ずっと続く恒常的な課題になりました。限られた人員で事業を継続し成長させていくためには、少人数でも事業が継続できる体制や仕組みを構築しなければなりません。
本記事では、人口減少社会が企業に与える影響を整理し、IT活用や業務改革を通じてどのようにこの難局を乗り越えるべきか、その道筋を解説します。
人口減少社会が企業経営にもたらす現実
人口減少という問題について、まずは日本が置かれている状況を確認してみましょう。
日本の人口減少と労働力不足の現状
国立社会保障・人口問題研究所の最新推計(※)によると、企業の労働力の中心となる生産年齢人口(15歳~64歳)は、以下のように推移して減少していくと予測されています。
2020年:7,509万人(実績)
2045年:5,832万人(予測)
2070年:4,535万人(予測)

※出典:国立社会保障・人口問題研究所「日本の将来推計人口(令和5年推計)」
https://www.ipss.go.jp/pp-zenkoku/j/zenkoku2023/pp_zenkoku2023.asp
赤字、赤点線を弊社にて追記
2020年を基準とすると、2045年には約1,700万人(約23%)もの労働人口が、2070年には約3,000万人(約40%減)もの労働人口が失われる計算になります。この事実が示唆するのは、「人手によって成り立っている業務が多くある企業は、現在の業務体制のままでは会社が回らなくなる」という未来です。
労働力不足が引き起こす企業内部の問題
では、労働力が不足すると具体的にどのような問題が起きるのでしょうか。現場、管理部門、経営それぞれの視点で見てみましょう。
現場業務が回らなくなるリスク
最も深刻なのは現場業務の停滞です。特定の担当者に依存した「属人化した業務」が多い場合、担当者が休職や退職をした瞬間に業務が回らなくなるリスクがあります。 人手不足の現場では教育に時間を割く余裕がなく、業務が属人化するため休職や退職のリスクを抱え続けることになります。
管理部門やバックオフィスへの影響
直接的な利益を生まないバックオフィス部門でも、人手不足のしわ寄せを受けます。 経理/人事/総務などの業務で、紙の処理や手入力といった人の手が必要なアナログ作業が残っていると、少ない人数で処理しきれず残業の常態化やミスの増加が発生するリスクが高くなります。その結果、社員の満足度が低下して離職につながり人手不足が加速する…という事態になりかねません。
経営判断の遅れにつながる問題
現場が目の前の作業に忙殺されると、経営に必要なデータの集計や報告が遅れるようになります。 市場の変化が激しい現代において、正確な現状把握と迅速な意思決定ができないことは致命的です。人手不足は単なる現場の負荷だけでなく、企業の舵取りそのものを鈍らせるリスクがあります。
人口減少時代におけるIT活用の本質
こうした状況下で、多くの企業が解決策として期待するのが「IT活用」です。しかし、ITはあくまで手段であり、導入そのものがゴールではありません。
IT化の本来の目的とは何か
企業におけるIT化の本来の目的は、経営戦略の実現や、経営課題の解決を支援することにあります。具体的には、コスト削減による利益率の向上や、付加価値の高い業務へのシフトによる売上増加、などです。
「みんなが使っているから」「便利そうだから」という理由ではなく、経営課題をITでどう解決するか、という視点が不可欠です。
これまでのIT導入が十分でなかった理由
これまで多くの企業がIT投資を行ってきましたが、期待したほど人手不足の解消につながっていないケースが散見されます。その理由は、目的が不明確なままITツールを導入したり、既存の業務プロセスを見直さずに、そのままシステムに置き換えようとしたことにあります。
ITツールの導入で期待した効果を得るためには、後述「ツール導入だけでは労働力不足は解決しない」で述べる対策を行う必要があるのです。
労働力不足に対してITが果たせる役割
労働力不足の時代において、ITにはどのような役割が期待されるのでしょうか。
人が行っていた業務をシステムで代替する
真っ先に思い浮かぶITの役割は、「人が行っていた定型業務をシステムで代替する」ことです。 例えば、受注データの入力、請求書の発行、在庫の確認作業など、ルール化できる業務はITの得意分野です。ITに任せられる仕事はITに任せることで、人のリソースを確保します。
AI・RPAなどを活用してITが対応できる範囲を広げる
近年注目されているAI(人工知能)やRPA(Robotic Process Automation)は、ITによる代替範囲を大きく広げる可能性を秘めています。 RPAを使えば、複数のシステムにまたがる入力作業を自動化できますし、AIを活用すれば、これまで人の判断が必要だった需要予測や問い合わせ対応の一部も自動化できる可能性があります。
人にしかできない業務へ集中できる環境づくり
ITで業務を代替することによる真価は、「人が人にしかできない業務に集中できるようになる」ことです。
上述のようなITにできることをITに任せ、人は人にしかできない業務、具体的には企画立案、顧客との交渉、新規事業の創出など、創造性やコミュニケーションが必要な領域にリソースを集中させることができます。さらに、AIはこの領域もサポートが可能で、企画や新規事業の草案作成や顧客との交渉に使えるデータの収集・作成をAIに任せることができます。
その結果、少ない人数で高い付加価値を生み出す組織へと変革することが可能になります。
ツール導入だけでは労働力不足は解決しない
高機能なツールを導入するだけでは労働力不足解決はされません。ツールを導入しても解決しない原因と解決するために必要な対応を解説します。
自社に合わないIT導入が起こる原因
IT導入の目的が不明確のまま費用対効果も検討せずに「話題のツールだから」と導入を決めると、導入しても使われなかったり、想定していた効果が得られない事態になります。
自社に合うシステムを導入するためには、目的の明確化と費用対効果の予測を立てる必要があります。
- IT導入の目的明確化
「残業時間を〇割減らす」「入力作業をゼロにする」といった、経営課題に基づいた明確なゴールを設定することがITツール導入には欠かせません。
後続のフェーズを進める際も、ここで定めた目的に合致しているかが判断基準になります。 - 費用対効果の予測
システムの導入費用・ランニング費用に対してどれだけの効果が見込めるのか、を具体的な数値に落とし込みます。費用対効果を明確にしないまま導入してしまうと、「現場は楽になったが毎月の費用は大幅に増加した」という事態になりかねません。そうなってしまうと、別のシステムに変更することさえ難しくなってしまうでしょう。
システム導入前にやらなければならないことについては下記コラムで詳細に解説していますので、ぜひご覧ください。
業務整理が不十分なまま進めるリスク
今の業務をそのまま自動化しようとすると、無駄な作業までシステム化してしまったり、多額の費用をかけたにもかかわらず改善された業務はほんのちょっとだけ、という事態になりかねません。
IT導入の前に「そもそもこの業務は必要なのか」「もっと効率的な手順はないか」といった観点で現在の業務フローを見直し、新しい業務フローを作成する必要があります。新しい業務フローを作成することで業務を抜本的に見直すことができ、無駄な機能をなくして必要な要件を抜けもれなく洗い出すことができるようになるのです。
ベンダー任せのIT導入が招く問題
システムベンダーはシステムのプロですが、貴社の業務のプロではありません。ベンダーに要件定義を丸投げしてしまうと、パッケージシステムありきの提案になりがちで、真に解決すべき経営課題とのズレが生じることがあります。
IT導入の主体はあくまで企業側にあり、自社がどうありたいかを描き、ベンダーへ正確に伝える必要があります。
ベンダーに丸投げすることのリスクについては下記コラムで詳細に解説していますので、ぜひこちらもご覧ください。
人口減少による労働力不足へ対応するために外部支援を活用する5つのポイント
とはいえ、日々の業務に追われる中で、自社だけで業務改革やIT戦略の立案を行うのは困難です。そこで有効な選択肢となるのが、専門家による「外部支援(コンサルティング)」の活用です。 外部支援を活用するメリットを5つのポイントで整理します。
1.業務全体を俯瞰して整理できるようになる
社内の人間は、既存の業務フローが「当たり前」になっているため、無駄や改善点に気づきにくいです。第三者視点が入ることで、客観的に業務全体を俯瞰し、ボトルネックを特定しやすくなります。
2.限られた労働力でも回る業務体制を構築できる
専門家は、他社事例や最新のトレンドを踏まえ、少ない人数でも効率的に回る業務プロセス設計のノウハウを持っています。属人化を排除し、誰でも遂行可能な標準化された体制づくりの支援が可能です。
3.業務とITを一体で設計できる点が重要
単なるツール選定ではなく、「業務をどう変えるか」と「ITをどう使うか」をセットで設計できるのが専門家の強みです。業務改革(BPR)とIT導入を連動させることで、投資対効果を最大化します。
4.経営視点でIT戦略を整理できる
現場の要望だけでなく、経営目標達成のために必要なIT投資は何か、という視点で戦略を整理できます。経営層と現場の橋渡し役となり、全社的な合意形成をスムーズに進めることができます。
5.人口減少時代を前提にした経営判断につなげられる
一過性の効率化ではなく、将来的な人口減少を見据えた「持続可能な経営基盤」を作るための判断材料を提供します。これにより、経営者は自信を持って次の一手を打つことが可能になります。
人口減少による労働力不足が進む今、次の一手を考えましょう
人口減少による労働力不足は、今すぐにでも向き合わなければならない課題です。これを単なる危機として捉えるのではなく、業務を見直し筋肉質な経営体質へと生まれ変わる好機と捉えることもできます。
重要なのは、自社だけで抱え込まず、適切な外部の知見を取り入れながら、スピード感を持って改革を進めることです。 IT活用と業務改革のプロフェッショナルとともに、10年後、20年後も勝ち残るための戦略を今、描いてみませんか。
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2026年02月23日 (月)
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