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 日本のITシステムは、海外に比べ機能と品質が重視されると言われます。
私も企業のIT部門をご支援していて、機能と品質にこだわり過ぎでは?と感じることがあります。
ITシステムの機能と品質は、必ずしも高ければ良いというものではありません。それぞれのITシステムの目的に合致しているか否かが重要です。多くの企業情報システムと言われるITシステムの場合は、最終的には経営への貢献が目的となります。
ITシステムの開発・運用の現場では、不具合ゼロ、機能カバー率120%を追及しがちですが、それを求めるあまり、リリースが遅れ、その結果、新商品の提供が遅れ機会損失が生じたり、業務効率化によるコスト削減を目的としていたのに、開発コストの増大で帳消しになったりしては意味がありません。
つまり、機能と品質・コスト・納期は、そのITシステムの目的に合わせバランスさせる必要があります。

しかし、何故日本では機能と品質が重視されるのでしょうか。理由は色々あると思いますが、私は以下の点が大きいと感じます。

1.リスクに対しての過度の恐怖

 期待する出力がされなかったりシステムダウンが生じたりすると、何かしらの業務上のリスクが生じます。それが受容できるレベルであれば問題は無いはずですが、必要以上にリスクを恐れリスク無しが最も良いとする傾向があるように思います。勿論リスクは無いに越したことはありませんが、そのために対策に多くの費用をかけ、投資効果と合致しなくなっては意味がありません。

また、リスクの捉え方にも原因があります。「リスクマネジメント」では、リスクを「発生確率」と「損害の大きさ」の2つの軸で定量的な評価を行いますが、情緒的にリスクを評価してしまい、実際より大きく捉えてしまうことがあります。新しいテクノロジーの導入のようなあまり知らないものが対象となる場合に、その傾向が強くなります。
最近、社会問題となっている電源、経済連携協定、食品添加物等に関しても同じことが言えるのでは無いでしょうか。

2.業績評価への影響

 企業のIT部門では、障害発生件数やサービス稼働率を業績評価の指標として使用するケースがありますが、そのような指標が社員個人の業績にも影響するとなると、機能と品質重視となるのも当然と言えます。
丸一日使用できない機能があってもビジネスに大きな影響が無いのであれば、問題がないはずですが、大抵、IT部門の過失とみなされ、原因がITベンダーにあれば対策・再発防止策を記載した報告書を提出させます。
内容によっては不具合を放置するといった選択肢があってもいいはずですが、業績を全て経営への適合度で評価するのは難しいので、評価のしやすい単純な指標を使用するのは仕方の無いことかも知れません。

3.技術者のプライド

 技術力に自信のある技術者や向上心の高い技術者ほど、機能と品質へのこだわりが強いと思います。そういった技術者は不具合を出さずにエレガントに仕事を完結したいという欲求から、つい機能と品質を重視しがちに思います。
また、コストや納期の超過は「技術」の世界では無く「ビジネス」の世界といった捉え方をするのか、それほどプライドに影響しないようですが、不具合のような「技術」の世界の問題は技術者としてのプライドが大きく傷つくので、何とか避けようとする傾向があります。
しかし、納期やコストとのバランスを考慮されていなければ、ただの自己満足となります。

日本におけるITシステムは高機能と品質を求めがちですが、そのITシステムの目的、機能と品質毎の重要度を考慮したうえでの水準とすることが重要だと思います。
日本の家電製品が機能と品質過多のために高価すぎて、海外であまり売れないのと同じ現象ではないでしょうか?
皆様の会社で使用されているITシステムの機能と品質が適正であるか、一度再確認されてみてはいかがでしょうか。

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2012年10月01日 (月)

青山システムコンサルティング株式会社

池田洋之