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業務改善プロジェクトは多くの企業で行われますが、途中で頓挫したり自然消滅したりするケースを度々目にします。原因は問題解決の難しさとプロジェクト運営の難しさにあります。
今回はこれから業務改善を始める方の参考として実際に企業で起こった事例をご紹介します。

 

事例

中堅食品製造業A社では、1年前に基幹システムリプレースのタイミングでIT部門のメンバーを中心にした業務改善プロジェクトを発足しました。しかし、作業進捗が悪く未だに方針も定まらない状態であるため、A社の社長は弊社に相談を持ちかけました。
社長はプロジェクトメンバーから報告された課題設定やプロジェクトの進め方が適切では無いと感じているようです。

A社のプロジェクトでは一体何が起こっているでしょうか。

 

プロジェクトは以下の手順で進めていました。

Ⅰ. 現場ヒアリング
Ⅱ. 現行業務・システム内容の整理
Ⅲ. 問題点洗い出し
Ⅳ. 改善施策検討

弊社がプロジェクトチームへの聞き取りや、作成ドキュメントを閲覧したところ、以下の問題があることが分かりました。

①現状調査に必要以上に手間をかけている
②現場の社員から問題点が挙がらない
③問題の本質にたどり着けない

各問題の状況と原因は以下のとおりです。

 

問題① 現状調査に必要以上に手間をかけている

プロジェクトチームは約8か月間、多くの工数を投じて現状調査を行っていました。長時間の現場ヒアリングを経て、事実と定性的な意見の一覧表や現行業務フロー図、現行システム機能説明書をしっかり作成していました。
しかし、これ程手間暇かけて整理・分析してもそこから大きな問題を導けていませんでした。これは現状調査をどの程度やれば良いかをイメージできず闇雲に細かく行っていたためです。
現状調査はまずはざっくりと全体を把握し、問題がありそうな部分の詳細を探っていかなければ効率的に行えません。また、いくら情報を整理しても改善策に繋がる分析ができなければ意味がありません。
具体的な方法としては、現場の社員の月間の作業一覧と頻度、作業時間をアンケートで調査し、効率的に概要把握をすると共に作業時間を定量的に把握します。その後、ヒアリングをしながら問題がありそうな部分を発見したら、詳細を調査し分析してきます。

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問題② 現場の社員から問題点が挙がらない

大抵、業務改善の必要性を感じる企業であれば現場の社員にヒアリングすると現場から問題点が多く挙がりますが、A社では大きな問題は殆ど挙がっていませんでした。
原因はプロジェクトチームがヒアリングの議事録を所属部門の部門長や経営層に提出し、誰がどのような発言をしたかを把握できるようになっていたためです。これにより、現場の社員は人事評価への影響を危惧し、本音の発言を控えるようになっていました。
現場の声を反映した業務改善をするためには、人事評価に一切関連させない事をプロジェクトのルールとし、現場社員の上長に発言者が特定されないようにする事が必要です。

 

問題③ 問題の本質にたどり着けない

プロジェクトチームは社長に対し、現状調査で挙がった問題と解決の方向性を中間報告しました。内容は、生産管理システムの画面の操作性の問題とその改善や、問題と直接関連の無いIoT製品導入による施策でしたが、社長が納得する内容ではありませんでした。
原因は改善施策検討のやり方にありました。プロジェクトチームは不十分ながらもいくつか挙がった個別具体的な問題を列挙し、それぞれに対し改善施策を検討していました。また、最新技術を取り入れようとし、動向調査で知った技術を解決策に含めていました。
しかし、このやり方では経営課題の本質を抽出し、有効な改善施策を導くことはできません。
有効な改善策を導くためには、具体的な個別のレベルで考えるのではなく,問題を抽象化・一般化して考える必要があります。また、経営的な課題を見定める必要があります。
本質的な経営課題に対する改善施策を立案するためには上記が遂行可能な能力・視点が必要であり、普段システム運用保守が業務の大半であるプロジェクトチームにとって、不慣れで難易度の高いものでした。
業務改善プロジェクトを行う場合、企画業務に慣れている経営企画や事業統括部門のような部門からメンバーをプロジェクトにアサインするとスムーズに進めることができます。
それでも難しいという場合は、コンサルタントが得意する領域なので、外部のコンサルタント会社に支援を依頼することもが有効な手段となります。

 

まとめ

A社のケースにおける方策のまとめは以下のとおりです。

・ 現状調査は闇雲に進めるのではなく、まずはざっくりと全体を把握し、問題がありそうな部分の詳細を探っていく。
・ 現場の声を反映した改善にするのであれば、人事評価に関連させないようなルール作成と情報管理を行う。
・ 問題の本質に迫るには、経営的な視点で個々の問題を抽象化・一般化する(それが可能なメンバーをアサインする)。

※事例は実際には別々の企業で生じた問題ですが、便宜上、1社の問題として記載しています。

 

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2018年07月09日 (月)

青山システムコンサルティング株式会社

池田洋之