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システムコンサルタント十亀 淳
2000年に独立系SI’erに入社。ITシステム運用、インフラ設計・構築を担当。 現場での経験に基づくシステムインフラの設計・構築・運用を強みとしつつ、さらに幅広い分野でクライアント企業、そして社会に貢献していくべく、青山システムコンサルティング株式会社に入社。 入社後はシステム化計画策定、RFP策定等のコンサルティング業務やシステムの移行支援、情報システム部門・セキュリティ部門の組織運営支援等に従事している。
はじめに

弊社はシステムに関するコンサルティングサービスを提供している会社ですが、多くの案件でBPR(Business Process Re-engineering)を伴うご提案となります。システムの導入自体はBPRの中の一部でしかないことがほとんどです。
既存業務を見直すBPRのプロジェクトは、多くの企業で大なり小なり存在します。そのため、BPRを推進する難しさを感じている方も多いのではないでしょうか。
この難しさを引き起こす要因は、当然ながらプロジェクトごとに違います。しかし共通して存在する「3つの誤解」がその一因であることを知っているだけで、BPRを進めやすくなり失敗を回避できると期待できます。
BPRはなぜ難しいのか

BPRの失敗の原因を探る前に、まずそもそも「BPRとは何か」をあらためて整理します。
BPRとは、既存の組織構造や業務フローを「抜本的に」見直して再構築する手法です。DX(デジタルトランスフォーメーション)を成功させるための前工程としても重要です。
部分的に改善するのではなく、「あるべき姿(ToBeモデル)」を追求することが重要です。IT活用、AI活用のみならず、業務ルールや業務プロセスの見直し、組織の改変等を伴いながら、コスト、品質、スピードなどの指標における目標達成を目指します。
プロジェクト推進には、部門間の壁を取り払う「全体最適」の視点と、現場の抵抗を乗り越えるための経営層による強いリーダーシップが求められます。
現場を動かす実行者が、リーダーシップをもつ経営層やBPRプロジェクトメンバーと同様に「全体最適」の視点を持つところに大きな難しさがあります。
BPRが失敗しがちな理由~3つの典型的な誤解~

では、現場を動かす実行者が「全体最適」の視点を持つのが難しい一因である「3つの誤解」について説明します。
誤解1:最良のアイデアは自然に共感を得られる
一つ目の誤解は、「最良のアイデアは自然に共感を得られる」ということです。
考えられる全てのアイデアを比較検討し、ある一つのアイデアの優位性を示したとしても、それが組織の中で受け入れられるかどうかは別問題です。
BPRのプロジェクトに参画している方々は、常日頃から対象の業務プロセスについて考えており、多角的に評価をした結果を「最良のアイデア」としているので、そのアイデアの素晴らしさを深く理解しています。
しかし、そのアイデアを実行する現場のメンバーは、そうとは限りません。近視眼的に、自分や自部署に対する影響だけを考える方々がほとんどです。「最良のアイデア」を多くの人に理解してもらい、共感を得るまでには時間がかかります。それまでは、「言っていることは理解できるけど、実行するのは抵抗があるな」と口に出さずとも心の中で思っている方々が少なくありません。
このような方々がいることを理解していれば、それに対する施策を計画することができます。例えば、現場で業務を行う人に共感してもらうためのコミュニケーションに、人と時間を費やすことを計画しておくことができます。
アイデアの共感は、アイデアが最良か否かではなく、適切に説明をして理解してもらうことで達成されます。
誤解2:アイデアを説明すれば実行される
二つ目の誤解は、「アイデアを説明すれば実行される」ということです。
アイデアを説明することがゴールではありません。共感を得られるところまで実行者にきっちり説明をしたとしても、それだけではアイデアは効果を獲得できません。
業務プロセスの変更は、その効果が得られるまで一定の期間を要します。その期間には既存プロセスよりも効率が下がるタイミングもあります。
その苦難の期間に耐えることを実行者だけに押し付けると、そのアイデアが正しく実行されなくなる可能性が高くなります。実行者が効率の低下を防ぐために、アイデアを悪気なく曲解してしまうのです。こうしてアイデアが個別最適化されると、既存の業務プロセスよりも効率が低下する期間が長期化するケースもあります。
アイデアを説明したあとは、苦難の期間を粘り強く伴走し、「アイデア実行の効果を獲得する瞬間を共有することが本当のゴールである」と認識することが大切です。
誤解3:アイデアを強制すれば適切に定着する
三つ目の誤解は、「アイデアを強制すれば適切に定着する」ということです。
トップダウンで、急速な変化を実行者に強制的に求めれば、短期的には効果が出るケースがあります。しかし「効果が出ているように見せている」だけで、実は本来の目的からずれた形で不適切な状態になってしまうことも少なくありません。
ボトムアップであれば、アイデア実行時における苦難の期間に見えてくる「アイデアが合わない部分」に対して細かくチューニングができます。
しかしトップダウンで急速な変化を求めると、チューニングをせずに「アイデアが合わない部分」の効率が低いまま放置されたり、そこだけ既存の業務プロセスが残ったままにされたりします。
しかし、実行者に勝手なチューニングをされることは、全体最適の視点では適切ではありません。アイデアのチューニングは、マネジメント層から全体最適の観点をもって適切なサポートの上で実施される必要があります。
よって、トップダウンでも、ボトムアップでもなく、全ての関係者がアイデアに参画する必要があります。トップダウンで強制的に押し付けても、適切に定着させることはできません。
BPR失敗の兆候チェックリスト

以下のような兆候が見られる場合、BPRプロジェクトが失敗に向かっている懸念があります。3つの誤解がこのような兆候に繋がっていないか、原因を早期に確認することが求められます。
1. 現場から「前のやり方のほうが楽」という声が出ている
BPRを進めるなかでは、業務プロセスの変更に伴い一時的には「前のやり方のほうが楽」というタイミングも起こり得ます。
変更による効果が得られるまでの一時的なものなのか見極めるとともに、現場ともその認識を合わせる必要があります。
また一時的な負荷だとしても、それに対応するための増員や業務調整など、実行する現場が疲弊しないような対策が必要です。
2. 業務変更に伴う効率低下が長期化している
「一時的」と想定していた効率低下が長期化してしまっている場合、アイデアが当初想定していた形で実装されていない可能性が懸念されます。
アイデアが現場判断で個別最適化されていないか確認しましょう。
3. 経営層、BPRプロジェクト、現場で「成功」の定義が一致していない
BPRの「成功」とは何かという定義が経営層、BPRプロジェクトメンバー、現場メンバーで齟齬があると、どこを目指せばよいのか分からなくなります。
アイデアとその実現によって目指すべき「成功」が何かを、関係者で認識を合わせることが大切です。
まとめ

今回挙げた「3つの誤解」を1つもしていない方もいらっしゃるかと思います。しかし、プロジェクトのメンバーだけでなく、マネジメント層や現場実行者も含めた全ての関係者が、全く誤解がない状態というのは稀ではないでしょうか。
BPRプロジェクトを推進する中で向き合う人に「誤解」がないか確認をしていくと、プロジェクトが進めやすくなります。こちらから確認することのハードルが高いようであれば、「誤解」を見かけたときに「誤解していること」を伝えるだけでも大きな効果があります。
小さなことのように感じるかもしれませんが、こうした草の根の活動が後から利いてきますので、ぜひ試していただければと思います。
社内だけでは難しい場合は、外部専門家をプロジェクト体制に組み込むことも有効です。
社内関係者だけでは部署間の調整が難航するような場面では、外部の人間が入ることで「全体最適」への合意に辿り着きやすくなります。また、BPRプロジェクトは頻繁に発生するものではなく、社内に知見を蓄積することが難しい面があります。
弊社では、第三者視点による整理、全社最適のためのToBeモデル策定、実行フェーズのプロジェクトマネジメント等を経験豊富なメンバーがご支援します。社内のみでの対応に難しさを感じられた場合、お気軽にご相談ください。
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2026年03月23日 (月)
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