
IT 投資は、大きく「攻め」と「守り」の領域に分かれるといえます。
「攻めのIT」と「守りのIT」、それぞれの目的や役割を整理したうえで、自社に必要なIT投資をどのように見極め、進めればよいのかを解説します。
記事の執筆
マネジャー吉田 勝晃
業務改善を得意とし、ITを活用して企業を強化・効率化するコンサルティングを強みとする。 また、公共機関の業務改善を行った実績も多く、公共機関向けのコンサルティングでも豊富な実績をもつ。
攻めのITと守りのITは目的がどう違うのか

IT の活用領域は、大きく「攻めのIT」と「守りのIT」に分けられます。
この二つの領域は、そもそもどのような内容なのか、どのように投資の方向性を考えたらよいのか、解説していきます。
売上や競争力の向上を目指すIT
「攻めのIT」とは、売上拡大や新規事業の創出、顧客体験(CX)の向上を図る戦略的なIT活用です。いわゆる DX(デジタル・トランスフォーメーション)も、「攻めのIT」といえます。
変化の激しい現代において、単なるシステム維持を超え、企業の持続的な成長と収益基盤の強化を実現するためには、あらゆる企業において「攻めのIT」は無視できない事業活動の一つになっています。
業務効率化やコスト削減を目指すIT
「守りのIT」とは、業務効率化やコスト削減、システムの安定的運用、セキュリティ強化を目的としたIT投資・活用を指します。
事業リスクを低減し健全な組織運営を支える不可欠な基盤であり、売上拡大やビジネスモデルの変革を目指す「攻めのIT」を果敢に推進するためにも、揺るぎない土台として欠かせません。
目的に応じて投資の方向性を見極める
「攻めのIT」と「守りのIT」は、そもそも目的が異なり、投資の考え方が異なります。
IT 投資を検討する際には、「費用対効果」という観点で検討をするケースが多いと思いますが、必ずしもその観点だけで意思決定をできるとは限りません。
目的に合わせて、投資への検討・判断をする必要があるのです。
自社に必要なIT投資はどう見極めるか

「攻めのIT」と「守りのIT」があることは先述のとおり解説いたしました。
それでは、「攻めのIT」と「守りのIT」、どちらに取り組んでいけばいいのか、その考え方について、解説します。
既存業務の負担が大きい場合
組織全体で既存業務の負担が大きく、新しいことに取り組む余力がまったくない場合は、まずは「守りのIT」に取り組むことをお勧めします。まずは既存業務の業務を改善し、組織として余力を作り出すことにより、「攻めのIT」に取り組む余力を生み出すのです。
ただし、既存業務が部分的に負担が大きくとも、「攻めのIT」に取り組むためのリソースが別にある場合は、必ずしも「攻めのIT」を後回しにする必要はありません。
新たな収益や顧客獲得を目指す場合
従来のビジネスを、従来のとおりに継続するだけでは、企業の競争力は相対的に低下していくことが多いといえます。あらゆる企業においては、新たな収益や顧客の獲得は、常に大きな経営課題の一つでしょう。
新たな収益や顧客の獲得のための施策として、「攻めのIT」への取り組みは重要であることは、間違いありません。
しかし、「攻めのIT」に取り組むためには、人的リソース、金銭的リソースなどが必要です。企業が維持、成長し続けていくためには、常に「攻めのIT」にリソースを投じることができる状況をつくっておくことが重要であるといえます。
攻めと守りの優先順位を整理する
攻めと守りの優先順位は、企業それぞれの状況により、まったく異なります。
重要なのは、「IT投資」「IT活用」を一括りにして考えるのではなく、「攻めのIT」「守りのIT」という視点も取り入れて、企業の状況に合わせてバランスよく取り組んでいくことです。
時には、「攻めのIT」に特化する(その逆も)、というタイミングもあるはずです。
収益につながるIT投資は何から始めるべきか

システム導入ではなく経営上のゴールを決める
ゴールの違いが、実施計画・投資領域を大きく変えます。まずは、収益増加につながるゴールを設定することが大切です。
実際には、収益増加のゴールであっても、その実現計画には何らかの効率化施策が含まれます。守りのIT投資における効率化施策との大きな違いは、攻めのIT投資における効率化施策にはその先のステージがあることです。そのため、効率化施策と記載しましたが、正確には効率化以外の目的も兼ねるケースがほとんどです。
このモデルを、経済産業省が「置き換えステージ」「効率化ステージ」「競争力強化ステージ」の三段階ステップとして公開しています。
攻めのIT活用指針(経済産業省)https://www.smrj.go.jp/supporter/tool/guidebook/guidebook1/fbrion000000206n-att/guide4youshiki_1.pdf
目的毎に多少の違いはありますが、置き換えステージか効率化ステージのいずれかに「情報のデータ化」施策が含まれます。
ゴール達成に必要な情報を整理・活用する
収益増加のゴールを目指す過程では、データ分析や情報提供などの情報活用が不可欠で、その準備として情報のデータ化が必要です。
IT技術の進歩により、データ化できる情報は以前より大幅に増えました。その分、データ化すべき情報の選択は以前より難しくなっています。KPIツリーなどにより整理された目的を達成するために必要な情報は何か、どのように活用するのか、どのように収集してデータ化するか、これらを明確にすることが大切です。
情報の整理、データ化を実行できたら、いよいよそれを活用してくことになります。
近年では AI 技術の進歩により、従来の構造化データばかりではなく、非構造化データも活用対象になってきました。
これからは、収益につながる IT 投資に取り組む際には、AI の活用も必須です。AI を活用して、より大きな成果を出すためには、足元でデータの整備も重要であることを、忘れてはいけません。
IT投資が成果につながらないのはなぜか

「攻めのIT」にしても「守りのIT」にしても、投資を進めても、期待した成果が出ないケースは少なくありません。
なぜそのようなケースが発生するのかを解説します。
システム導入そのものが目的になっている
IT投資をしても期待した成果がでないケースの原因として、システム導入そのものが目的になっていることが良くあります。
IT投資企画・検討している時点では、「費用対効果」「◯% の売上向上」など、明確な目的が定まっていたとしても、システム導入のプロセスがはじまると、システム導入そのものが目的になってしまい、システムの使い勝手やデザインなど、目先のことに目がいきがちで、当初の目的を見失うことは、少なくありません。
必要な情報を整理しないままデータを集めている
どんなに優れたシステムも、適切なデータが蓄積されなければ、ただの器でしかありません。
システム開発が始まると、システムに必要な機能にばかり集中し、目的達成のために必要なデータについての議論がおろそかになったり、データを蓄積するための業務プロセス・ルールの整備が不十分になるケースが良くあります。
IT投資をどう計画して進めるか

企業は、いつも多くの経営課題を抱え、その解決をしようと活動しています。
その中で、IT 投資による解決策を検討することも、少なくないでしょう。
企業はどのようにIT投資を計画し、進めていけば良いのか、解説します。
経営課題から優先順位を整理する
企業が抱えている多くの経営課題から、優先順位を整理して取り組む必要があります。
一つ、「成果(Y軸)」と「実行にかかる時間(X軸)」に優先順位を整理する考え方を紹介します。

優先順位付けの手段はこれに限る必要はありませんが、限りある企業のリソースで全ての課題解決に取り組むことはできませんので、何らかの考え方で優先順位を整理して課題解決に取り組むようにしてください。
費用対効果だけで考えない
IT投資に限らず、「投資」というと、「費用対効果」だけで優先順位を決定するのも、無理があるでしょう。
「費用対効果」に限らず、「目的」にあったIT投資であれば、実行するべきでしょう。
IT投資の承認者である経営層が「費用対効果」ばかりで評価してしまうと、現場がIT投資の企画・検討をして経営層に承認を得る際に、「現実的ではない費用対効果」を試算して提示してくるようになりがちです。十分に注意しましょう。
社内だけで判断が難しい場合は第三者へ相談する
会社全体のIT投資の検討・計画は、範囲も広く、自社の知識や経験、主観だけでの対応には限界があります。
数多くの企業のIT投資に関する経験、知識を有する第三者(ITコンサルタント・システムコンサルタント)に相談することは、有力な選択肢の一つといえます。
まとめ|自社に合ったIT投資の進め方を見つけよう
IT投資について、まずは「攻めのIT」「守りのIT」の観点があることをお伝えしました。
どちらから取り組むべきかは、企業の状況によって異なることには、注意してください。
そして、企業全体のIT投資施策の優先順位についても、企業の状況によって変わります。
重要なのは、「他の会社がやっているから」ではなく、自社が取り組むべきIT投資を、しっかりと見極めて優先順位を決めることです。
いざ IT 投資を実行する際には、「IT化」「システム化」そのものが目的にならないよう、当初の目的を見失わず、目的を達成することを常に心がけてください。
2026年10月08日 (木)
青山システムコンサルティング株式会社
