EVMに取り組む

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 現在、複数プロジェクトの管理に携わっておりますが、そこでの進捗管理およびコスト管理にEVM手法を活用しています。EVMと言えば、BAC・PV・EV・AC・SV・CPIなど略語が多くてわかりにくく、未経験の方にとっては、導入が面倒、管理負荷が増えるのでは・・・というイメージをお持ちではないでしょうか。今回のコラムでは、EVMで何が出来るのか、また、EVM導入・実践のコツなどをご紹介したいと思います。

 EVMとはアーンド・バリュー・マネジメントのことで、システム開発等のプロジェクトの「進捗」および「コスト」の状況を定量的に評価する手法です。QCDのうち、コスト、納期の部分を「見える化」するわけです。1990年代にアメリカの国家プロジェクトでこの手法が活用され、脚光を浴びました。PMBOKの中でもコスト・マネジメントの技法として言及されています。

 EVMで分かるのは、簡単に言えば以下の4つです。

1) 現時点の作業予定と作業実績の差異、スケジュールの効率
例:スケジュールの作業予定100人日に対して作業実績は110人日。スケジュールは10人日分進んでおり、スケジュール効率は110%(Good)

2) 現時点の投入コストと作業実績の差異、コストの効率
例:投入コスト100人日に対して作業実績は90人日。投入コストは10人日分超過しており、コスト効率(投入コストに対する実績)は90%(Bad)。

3) 納期の予測
例:スケジュール効率は110%。この効率でいけば、あと11ヶ月の予定を10ヶ月程度に前倒しできそうだ。

4) 残コスト、総コストの予測
例:コスト効率は90%。この効率でいけば、残コスト100百万の予定が111百万かかりそうだ。

 このように、進捗やコストを曖昧に表現するのではなく、工数(または金額)や指数を使って具体的に計測・予測するのです。

 昨年から今年にかけて私が携わりました4つのプロジェクトにおいてEVMを適用しています。プロジェクト期間中は意識しにくいコストに対する作業効率や残コスト予測をEVMにより数値化し日々ウォッチすることで、コスト超過に対する引き締め効果を発揮しています。

 プロジェクトの初期~中期においては、
「外部設計が進まずスケジュール遅延が見られるが、開発フェーズになったら一気に取り戻すぞ。」
「かなり過残業が発生したが、スケジュール通りなのだから大丈夫だろう。」
というように納期、コストを甘く考えてプロジェクトを進めてしまうケースも見受けられます。
 EVMでは、
「このままの作業効率でいくと、納期が1.5倍の期間に伸びますよ。」
「残業が多くて、現時点でコストの消化予定を5人月分(5百万)オーバーしています。このままでいくと、確実にコスト超過、赤字プロジェクトに陥りますよ。」
ということを数字ではっきり見ることができます。 

 また、EVMはプロジェクトメンバーのコスト意識向上にも力を発揮します。プロジェクトメンバーは、「スケジュールさえ遅延しなければ良いでしょう。」と考えがちです。日々の進捗会議や朝会などで開発担当者と消化コスト/残コスト予測などを共有することで、開発者の意識改善を図ることにも役立ちます。

 EVMはMSプロジェクトなどのプロジェクト管理ツールを導入しなければ出来ないのではないかとお考えの方もいらっしゃるでしょう。もちろん、そのようなツールがあれば導入は簡単になると思いますが、予算の都合や、社内のルールで全社的にExcelのWBSを利用しているなど、ツールの導入が難しいケースもあります。

 私の経験では、開発工数50人月程の中規模プロジェクトまでであれば、EVM管理はExcelで行うことが十分可能です。EVMで必要なのは、PV・EV・ACの3つの数値の計測です。

PV=Planned Value(計画価値)・・・計測時点の作業予定工数の累積値
EV=Earned Value(出来高) ・・・計測時点の作業実績工数の累積値
AC=Actual Cost(実コスト) ・・・計測時点の投入工数の累積値

 プロジェクトの総工数をWBSの各タスクにきちんと割り振ることさえ出来ていれば、作業開始日、作業終了日、進捗率などの予定/実績から作業予定工数(=PV)と作業実績工数(=EV)を割り出すことができます。多少の計算式の埋め込みやマクロが必要となりますが、一度作ってしまえばそれで済みますし、今後別のプロジェクトでも活用できます。あとは投入工数(=AC)が必要ですが、これは社内でプロジェクト毎の工数管理を行っていれば、そこから数字を持ってくるのが効率的でしょう。無ければメンバーにプロジェクトに関わる日々の作業時間を記録してもらいます。

 EVMを確実にこなしていくためのコツは、
「精度の高い見積を行い、WBSに分割すること」
「日々の実績(=EV)を正確に捉えること」
であると思います。
そのベースが無ければ、EVMの数字は信用できるものではありません。
「それが難しいのではないか!」と言われてしまいそうですが、正確な見積とWBS分割、および実績の把握をできていないプロジェクトは、そもそも計画および管理に多大なリスクを抱えていると言えます。

 綿密な計画を立て、実績を正確に捉える。それなしにはどのようなプロジェクト管理手法も上手く作用しません。逆に、そのような土台があればEVMを導入するのはさほど難しくはなく、また、プロジェクトを可視化してくれる強い味方となるでしょう。

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2012年12月19日 (水)

青山システムコンサルティング株式会社

山口晃司