青山システムコンサルティングのコンサルティングコラムです

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 今IT業界ではSaaS、PaaS、IaaSなど「クラウドコンピューティング」の話題が花盛りです。この業界ではいつも話題先行型の感があり、世間で騒がれるほど一般的には普及していない技術が、あたかも当たり前のように語られる傾向があります。

「クラウドコンピューティング」もそのうちのひとつです。大手企業ではクラウドのセキュリティーやサービスレベル面で不安を持つところが多く、電子メールやグループウエアなどでクラウドを導入することはあっても、基幹業務システムでクラウドを利用しようとするところはほとんど無いようです。

しかし市町村などの地方自治体では様子が違うようです。

 2000年頃から進められてきた電子自治体への取り組みがあります。これまで、電子自治体を実現するために、共同アウトソーシングなど、さまざまな試みがなされてきました。それから10年を迎える今、総務省主導で「自治体クラウド」が進められ、開発実証事業が展開されています。「自治体クラウド」とは地方公共団体の情報システムをデータセンターに集約し、市町村がこれを共同利用することにより、情報システムの効率的な構築と運用を実現するための仕組みです。赤字財政の自治体も多く、コスト削減が期待できるクラウドコンピューティングは総務省の後押しもあって、かなりの自治体が導入を予定しているようです。
自治体は住民票や地方税を決定するための個人の収入データなどの重要な個人情報を保持しています。しかしながら「自治体クラウド」が推進される拠り所としてLGWANといわれる、すべての地方公共団体を収容可能な行政内に閉じたネットワークの存在があります。LGWANでは通信経路の暗号化や認証基盤などの高度なセキュリティー確保の仕組みが提供されています。またサーバーも日本国内に設置されるため、海外のテロの脅威にさらされることもありません。

これらのインフラが充実して初めて「クラウドコンピューティング」の一般企業の導入が加速するものと思われます。あとは利用料金次第です。国内のコンピュータメーカーや大手のSIベンダーもクラウドビジネスにこぞって参画してきていますが、先行している米国のGoogleやAmazonに比べると規模が2桁から3桁くらい違います。国内のクラウドベンダーはプライベートクラウドと銘打ってセキュリティーレベルの高さをアピールしていますが、GoogleやAmazonとの利用料の差は歴然としています。

近い将来クラウドでのデータを暗号化して保持し、利用企業内でのみ復号化できる技術が確立すれば、「クラウドコンピューティング」のセキュリティーレベルは格段に高まります。

そうなれば、「規模の経済」の原理で「クラウドコンピューティング」の市場はGoogleやAmazonに寡占化していくのではないかと考えます。二重にも三重にも冗長化されたデータが暗号化されて世界中に分散されて保持されていれば、これほど安全なシステムは無いのではないでしょうか。

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2010年12月01日 (水)

青山システムコンサルティング株式会社

谷垣 康弘(元会長)