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 現代の企業において、ITシステムは経営戦略、業務効率化、コスト削減等のあらゆる局面で必要不可欠なものになりました。

 ERP(Enterprise Resource Planningの略で統合型の業務パッケージシステム)のような大規模システムから、量販店などで販売しているような小規模システムまで、あらゆるシステムが企業に導入されています。しかし、今もなおITは急激に進化しており、今後もITを追随するように「システム化」は短いサイクルで繰り返されると考えられます。

 そこで今回は、費用対効果、コスト削減、業務上の緊急性等、多々あるシステム化の判断材料の一つである「業務成熟度」について紹介したいと思います。

 まずは業務成熟度とシステム化の関係について整理します。成熟度のモデルはCOBIT(※ITガバナンスの成熟度を測るフレームワーク)等でも定義されていますが、今回は分かり易く以下の3段階で整理します。

①成熟度レベル:低(業務プロセスが定義されていない状態)

 業務プロセスや処理のロジックを確立できていない業務です。
 例えば、要員計画や売上予測のように、計算式や係数を毎回試行錯誤しながらシミュレーションを繰り返しているような業務が該当します。基本工程が定義されていても、例外対応の頻度が多く、その度に工程を変えるような業務もこのレベルに該当します。

 これらの業務は「トライアンドエラー」が基本です。

 各個人が計算式や係数を容易に変更でき、マスタ化も必要ない、そんなツールを利用することが最適な業務です。つまり、無理にシステム化するより、エクセルのような表計算ツールを利用する方が適している業務です。

②成熟度レベル:中(業務プロセスが定義されている状態)

 処理のロジックが固定化され、業務プロセスも確立されている業務です。
 これらの業務はシステム化に最も適した業務です。定型化され、且つ、反復性の高い業務のシステム化は最も業務効率化の効果が大きく、既にシステム化が進んでいる業務であっても統合化や合理化を検討できます。

 ただし、業務成熟度は「請求」「売上」のように処理単位で判断せず、細分化して判断することが大切です。業務プロセスが確立していると考えていた業務にも、細分化すると、複雑な例外処理のように成熟度レベルの低い業務が含まれていることがあります。確立された業務と未成熟な業務は切り離して考えることが大切です。

③成熟度レベル:高(業務プロセスが管理されている状態)

 業務が定着し、計画・統制・改善を継続できている業務です。

 このレベルまで達している業務は、ある程度システム化が進んでいるはずです。検討すべきは「改善効果を算出・評価」する業務もシステム化すべきかです。改善効果の計画・改善・評価サイクルの継続は組織能力を高め、大きな改革につながります。

 「業務成熟度」と「システム化」は密接な関係にあります。「現在の業務の成熟度」と「システム化によって目指す業務の成熟度」のギャップを正しく把握できなければ、システムを導入しても期待する効果を得ることはできません。
 例えば、成熟度レベルの低い業務を標準化するためにERPを導入しても、「ERPに業務プロセスや処理ロジックを合わせる」経営判断が欠けるとどうなるでしょうか?現場ではERP導入後も変わらずエクセルで計算している、こんなことが実際に起こり得るのです。

 目指す業務の成熟度によっては、システム化より先に業務成熟度を上げる必要があるかもしれません。今後も定型化できない(あえて定型化しない)シミュレーション業務であれば、無理にシステム化する必要はないかもしれません。

 システムのような「目に見えるもの」と違い、業務成熟度のような「目に見えないもの」は見落としがちです。業務成熟度とシステム化の関係を正しく理解することが、システム化の確かな助けになるはずです。

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2015年12月15日 (火)

青山システムコンサルティング株式会社

吉田勝晃