業務変革における3つの誤解

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【はじめに】
 私が担当する案件は、BPR(Business Process Re-engineering)を伴うことが多く、システムの導入自体は、BPRの中の一部でしかないことがほとんどです。
 既存業務を見直すBPRのプロジェクトは、多くの企業で大なり小なり存在します。そのため、BPRを推進する難しさを感じていらっしゃる方は多いのではないでしょうか。
 この難しさを引き起こす要因は、当然ながらプロジェクトごとに違います。しかし、共通して存在する「3つの誤解」が、その要因の一つであることを知っておくだけで、BPRを進めやすくなることが期待できます。

【誤解その1:アイデアの共感】
 一つ目の誤解は、「最良のアイデアは共感を得られる」ということです。
 考えられる全てのアイデアを比較検討し、ある一つのアイデアの優位性を示したとしても、それが組織の中で受け入れられるかどうかは別問題です。
 BPRのプロジェクトに参画している方々は、常日頃から対象の業務プロセスについて考えており、多角的に評価をした結果を「最良のアイデア」としているので、そのアイデアの素晴らしさを深く理解しています。
 しかし、そのアイデアを実行する人は、そうではありません。近視眼的に、自分に対する影響だけを考える方々がほとんどです。「最良のアイデア」を多くの人に理解してもらい、共感を得るまでには時間がかかります。それまでは、「言っていることは理解できるけど、実行するのは抵抗があるな」と口に出さずとも心の中で思っている方々が少なくありません。
 このような方々が少なくないことを理解していれば、それに対する施策を計画することができます。例えば、アイデアを実行する人に共感してもらうためのコミュニケーションに、人と時間を費やすことを予算として確保しておくことができます。
 大事なことなのでもう一度お伝えします。アイデアの共感は、アイデアが最良か否かではなく、適切に説明をして理解してもらうことで達成されます。

【誤解その2:アイデアの実行】
 二つ目の誤解は、「アイデアの説明がゴールである」ということです。
 共感を得られるところまで、アイデアの実行者にきっちり説明をしたとしても、それだけではアイデアは効果を獲得できません。業務プロセスの変更は、その効果が得られるまで一定の期間を要し、その中には既存プロセスよりも効率が下がる期間(チェンジカーブ)もあります。
 その苦難の期間をアイデアの実行者だけに押し付けると、そのアイデアが正しく実行されなくなる可能性が高くなります。アイデアの実行者が、効率の低下を防ぐために、アイデアを悪気なく曲解してしまうのです。 こうしてアイデアが個別最適化されると、既存の業務プロセスよりも効率が低下する期間が長期化するケースもあります。
 アイデアを説明したあとは、苦難の期間を粘り強く伴走し、「アイデア実行の効果を獲得する瞬間を共有することが本当のゴールである」と認識することが大切です。

【誤解その3:アイデアの強制】
 三つ目の誤解は、「強制すれば実行される」ということです。
 トップダウンで、急速な変化をアイデアの実行者に求めると、短期的には効果が出るケースがあります。しかし、「効果が出ているように見せている」だけであることも少なくありません。
 ボトムアップであれば、アイデア実行時における苦難の期間に見えてくる「アイデアが合わない部分」に対して細かくチューニングができます。しかし、トップダウンで急速な変化を求めると、チューニングをせずに、「アイデアが合わない部分」の効率が低いまま放置されたり、そこだけ既存の業務プロセスのままにされたりします。
 とはいえ、アイデアの実行者に勝手なチューニングをされることは、全体最適の視点では適切ではありません。アイデアのチューニングは、マネジメント層からの適切なサポートの上で実施される必要があります。
 よって、トップダウンでも、ボトムアップでもなく、全ての関係者がアイデアに参画する必要があります。

【まとめ】
 今回挙げた「3つの誤解」を1つもしていない方もいらっしゃるかと思います。しかし、プロジェクトのメンバーだけでなく、マネジメント層もアイデアの実行者も含めた全ての関係者が、全く誤解がない状態というのは稀ではないでしょうか。
 BPRプロジェクトを推進する中で向き合う人に「誤解」がないか確認をしていただくと、プロジェクトが進めやすくなるかと思います。こちらから確認することのハードルが高いようであれば、「誤解」を見かけたときに「誤解していること」をお伝えしてあげてください。
 小さなことのように感じるかもしれませんが、こうした草の根の活動が後から利いてきますので、ぜひ試していただければと思います。

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2015年04月04日 (土)

青山システムコンサルティング株式会社

長谷川 智紀