青山システムコンサルティングのコンサルティングコラムです

TEL:03-3513-7830|お問い合わせ

コラムカテゴリー:

 昨年はビッグデータに始まり、ビッグデータに終わった1年だったと思います。
 昨年の新春のコラムでは「ビッグデータ活用の先に来る世界」と題して「コンピュータ将棋」の例を用いて人工知能の可能性と我々人間の存在意義について述べました。ところが、それらはそう遠くない時期に当たり前のように実現しそうです。

 先日高校時代の恩師のご自宅にお伺いしたところ「しゃべる貯金箱」という面白いおもちゃがありました。

■ しゃべる貯金箱
 その貯金箱は500円玉専用で、毎日お昼の12時になれば「貯金しろ」と催促するそうです。それも日によってしゃべり方が異なり「貯金の時間で~す」みたいにしゃべる時や、500円玉1枚入れると「たったそれっぽっちか」とか「今、2万円になりました」など、とても豊富なボキャブラリーで話をするそうです。
 箱の側面には目と口があり、それらが動いて表情豊かにしゃべります。
 また、箱の上にボタンがあり、ボタンの押し方によっては(たぶん押し方のスピードの様なのですが)子供か大人かが認識できるらしく、子供なら「ボタンもっと押してよ」とか「お金入れないのに一緒に遊んでやらな~い」などと言うらしいのです。あまりボタンを叩きすぎると怒ったり寝たりします。
 ここまでくると、もはやおもちゃの域を脱して、一人暮らし用の話し相手になりそうです。
 昔「たまごっち」という卵形のケースのなかのキャラクターを育てるおもちゃがありました(今リバイバルしているみたいです)が、育て方によっては怒りっぽくなったり、最悪死んでしまうといった人工ペット的なものが人工知能のおもちゃ適用の走りではなかったかと思います。

 話は少し脱線しますが、このしゃべる貯金箱には肉食系と草食系があり、草食系はよくしゃべりかなりうるさいらしいです。

■ コグニティブ・コンピューティング
 これまで人工知能的なものは、上記のようなおもちゃやチェス、将棋などエンターテインメント的なものへの適用が多かったように思いますが、ここ最近はビジネスへの応用が目立つようになりました。

 昨年末にIBM社がデータ分析のクラウドサービス「IBM Watson Analytics」の正式提供開始を発表したのはみなさんの記憶にも新しいと思います。
 Watson Analyticsのテーマは、企業や組織のあらゆる人々が、ビジネスにデータを活用できるようにするということだそうです。既存のBIツールとの大きな違いは、「データ分析作業をやさしくする」のではなく「データ分析作業をしなくて済む」ことを目指していることにあるそうです。データ分析のノウハウを持たなくても、他の人たちがつくるダッシュボードを受動的に見るだけでなく、ある程度能動的に知見を得られるようになっていると説明しています。
Watson Analyticsが答えられるビジネスの言葉での質問の例として、「今期予算が達成できなかったのはなぜか」「自社の売上げの主な促進要因は何か」「締結できる可能性が最も高い契約はどれか」「どうすれば自社サービスの解約率を下げられるか」などを挙げています。しかし、厳密に言えば、これらは全て、売上げ、受注/失注、解約といった要素と、データに含まれる他の変数との相関係数を示すというタスクに翻訳し、各変数の相関性を視覚化して表示するというのが正確な機能のようです。
 したがって、「Watson Analytics」使いこなすためには、提供するデータの内容が単純な売上の内容だけでなく、販売チャネルやエリア、納入リードタイム、ひいては先方の担当者の異動情報やキャンペーン情報のような定性的な情報も重要になることがお解りになると思います。単純な売上データを提供しても精緻な結果は返ってこないということです。そう言えば昔からコンピュータは「Garbage in Garbage out(ゴミをいれてもゴミしかでてこない)」と言われていたのは今も変わらない真実ですね。
 IBMが発表した「Watson」という人工知能は業界ではコグニティブ・コンピューティング(Cognitive=認識の;経験的知識に基づく)といいます。

■ IBM社の人工知能開発の歴史
 IBM社の人工知能の研究の歴史は古く、「ディープ・ブルー」というチェスの対戦専用にスーパーコンピュータを使った人工知能システムの開発は20年以上前にさかのぼります。チェスの当時の世界チャンピオンに勝利したのは1997年5月でした。

 Watsonは2011年、米国の有名なクイズ番組「ジョパディ(Jeopardy)!」で優勝したころから本格的なビジネスへの適用を開始し始め、当初は医療関連や金融分野への適用から始めました。
2013年「Watson」は腫瘍学研究の分野において臨床試験データを学習し、医療記録、患者の経過といった数十年のがん治療の歴史に相当するがん治療履歴のデータを、ほんの数秒で厳密に調べて、証拠ベースの治療の選択肢を医師に提供する力があると発表しました。

■ 人工知能の基幹システムへの適用
 そう言えば弊社のクライアントでも昨年、顧客の現住所や要望から顧客に合った最適な待合せ場所と相談相手を推薦する機能を基幹システムに実装していました。これも初歩的ではありますが、人工知能の基幹システムへの適用事例ではないかと思います。
 ITシステムは事務処理の合理化から始まって、ERPによる組織の最適化さらには業界全体のSCM(サプライチェーンマネジメント)の改革を経て、最終的には知識や経験から学習し高度な判断を自動的に行う人工知能機能へと進化していくのでしょう。

 今年からIT業界ではコグニティブ・コンピューティングが本格化しそうです。

 以上のように人工知能はゲーム、おもちゃなどのエンターテインメントから家電、自動車、さらにITシステムの分野において身の回りに普通に見られるような時代になってきたのではないでしょうか。このスピードを見ていると昔の漫画やSF小説に出てきたアンドロイド(人造人間)の出現も、そう遠くない私が生きているうちにあるのではないかと楽しみにしています。

この投稿をシェア

2015年01月07日 (水)

青山システムコンサルティング株式会社

谷垣 康弘(元会長)