効果が見込める企業とは?いま話題のワークスタイル変革

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【はじめに】
 2011年3月11日、未曽有の被害をもたらした東日本大震災が発生しました。このとき、各社が準備をしていたBCP対策の真価が問われました。その結果、災害発生時の計画が机上の空論であったことを確認させられた企業では、BCPの見直しを実施せざるを得ませんでした。

 改めてBCP対策を考えた多くの企業が、テレワーク(在宅勤務)の導入を検討しました。今まで以上に注目を浴びたテレワークでしたが、導入に踏み切らなかった企業もしくは導入してみたものの止めてしまった企業が多かったのではないでしょうか。こちらは、実際の調査結果にも如実に表れております。在宅型のテレワーカーは、2011年:490万人、2012年:930万人、2013年:720万人で推移しており、数字だけ見れば、震災後に新たにテレワークを開始した人の約半数が導入を止めた、という形になっています。
(国土交通省 平成25年度テレワーク人口実態調査)

 さて、本当にテレワークは止めた方が良いのでしょうか。

アメリカのYahoo!も2013年6月から在宅勤務禁止に踏み切りました。
(2013年2月に在宅勤務禁止について書かれたメモが社員に送られた報道)
世界中に瞬く間に広がったこのニュースにより、世界中でテレワークの是非について議論が巻き起こりました。現在のところの論調としては、賛否両論があるもののテレワークは拡大の方向にあります。ここでは、テレワーク導入を検討するときのポイントについて述べたいと思います。

【テレワーク成功のポイント】
 上でご紹介した資料(国土交通省 平成25年度テレワーク人口実態調査)をご覧になられた方はお気づきかもしれませんが、テレワーク導入の成功とワークライフバランスの実現は密接な関係があります。

 個人的な意見としては、テレワークはコストカットと時間の有効活用による利益拡大の可能性があるため、ワークライフバランス実現の側面だけが強調されることには違和感があります。しかし、わかりやすく誰もが享受できるメリットとして、ワークライフバランスがあるという意味では理解をしています。こちらを読んで導入をご検討される方にとっては大事なことですので繰り返しますと、テレワークはともすれば「従業員満足度向上のための施策」のように理解されてしまいがちですが、それだけではなく、企業の根幹である「利益拡大に寄与する可能性がある施策」であることを理解した上で、ご検討されることをお勧めします。

 さて、本題に戻りますと、資料には『テレワークを「特にメリットなし」と回答した割合は「ワークライフバランスが実現していない」人の方が高い』と記載されています。ということは、「テレワークを用いたワークスタイルの変革により、ワークライフバランスを実現した人は、メリットを感じている」ということになり、「長時間勤務の抑制」「公私時間の切り分け」などが成功のポイントになると考えられます。

 つまり、テレワーク環境の構築だけでなく、それに合わせた制度の構築も合わせて考えることが重要ということです。こちらの点については、このあとも少し触れます。

【ワークスタイル変革の潮流】
「ワークライフバランス」「ワークスタイルの変革」は、グローバルレベルで注目度の高いキーワードになっており、例えばリンダ・グラットンの「ワーク・シフト」は、世界的なベストセラーとなりました。こちらの本の中では、テレワークによるワークスタイルの変革が生々しく描かれており、まさにワークライフバランスが取れなくなっている状態が、2025年のワークスタイルの一つとして書かれています。
(ワーク・シフト リンダ・グラットン(著), 池村 千秋(翻訳) プレジデント社 (2012/7/28))

 では、なぜテレワークを導入すると、ワークライフバランスが取れなくなってしまうのでしょうか。それは、労働をする「時間」と「場所」の制約が無くなってしまうからです。いつでもどこでも仕事ができる環境により、常に細切れの仕事が展開していくことになります。それはまるで、自分自身と仕事が「常にオンライン状態」であると言えます。

 この課題があることは、世界中で前提として共有されている中で、それでもワークスタイル変革の話題は、さらなる盛り上がりをみせています。リスクが見えているのにもかかわらず、それでも導入に取り組む理由は非常に単純です。それは、リスクがかすむほどの大きなメリットが期待できるためです。

【ワークスタイル変革の目的】
 ワークスタイル変革のメリット、すなわち、ワークスタイル変革の目的には大きく分けて二つの観点があります。1つ目はフレキシブルな「労働時間」の観点と、2つ目はフレキシブルな時間の上で働く「労働者」の観点です。

 まず「労働時間」についてですが、グローバル化にともない、同じタイムゾーンの人とだけ仕事をすることが難しくなってきました。取引先やビジネスパートナーに海外が含まれない企業は、非常に稀なケースなのではないでしょうか。ビジネスタイムにズレがあると、コミュニケーションに必ずタイムロスが生まれます。ここを埋めるために「どちらかに合わせる」というのも、複数の取引先を抱えていれば、合わせる先を決めることができません。タイムロスを無くそうとすれば、フレキシブルに対応する必要が出てきます。すなわち、「フレキシブルな労働時間」で得られるメリットを乱暴にまとめれば、タイムロスの最小化によるビジネススピードの獲得になります。ビジネススピードは不要、という企業はほとんどないのではないでしょうか。

 次に、「労働者」についてです。こちらは、メリットから先に申し上げますと、場所の制約を受けずに有能な人材を採用できる点になります。「家庭の事情で北海道を離れられない優秀なプログラマー」、「主要取引先が集まる国の現地マーケッター」など、今までは採用を諦めたり、駐在者を派遣したり、別の人を教育したり、もしくは不利な契約を受け入れたり、多くのコストをかけていた部分の制約が無くなります。少し前までは、「ダイバーシティな人材活用」と謳いながら「育児サポート」のみ取り組んでいる、という企業が多かったかと思います。しかしこれからは、ダイバーシティの本質に踏み込み、「人材の多様性を許容でき、それを活用できることが競争力の源泉」という形になっていきます。さらに先には、それが当たり前の世の中になっていくと考えられます。

【実現のための3つの検討テーマ】
 ここまでの話の中で、「うちは、そんなことをしている余裕はない」「それって、大企業さんだけが取り組める話でしょ」と感じた方もいらっしゃるかもしれません。でも実は、小回りのきく企業の方が、よりコストと時間をかけずに導入ができ、メリットを享受しやすいと、私は考えています。

 その理由は、ワークスタイル変革を実現するための検討テーマの中の1つが、企業の規模が大きければ大きいほど、難しくなってしまうからです。ワークスタイル変革を実現するための検討テーマとは以下の3つです。

① 新しいワークスタイルに合った制度構築
② 新しいワークスタイルを実現するためのICT環境整備
③ 新しいワークスタイルで働く文化の啓蒙

ここで①と②は、各企業が実現したいワークスタイルを定義すれば、他社の事例を参考にしたり、導入経験のあるコンサルタントの活用をしたりすることにより、構築することは可能かと思います。しかし、③は他社の事例がほとんど役に立ちません。それは、各企業には既に存在する文化があるからです。「顔と顔を突き合わせてコミュニケーションをする文化」、「遅刻厳禁で午前9時に全社員が出社する文化」、「みんなでラジオ体操をしてから業務を開始する文化」、それぞれの文化には企業ごとに意味があり、継続により醸成されてきた背景があります。これが、まだ若い企業や声が通りやすい規模の企業であれば、変革を推進しやすい部分があります。

 また、上述させていただいた「ワークライフバランスがとれなくなるリスク」をヘッジする方法は、制度や環境でできることもありますが、最終的には「文化」に他なりません。テレワークにより、直接対面でコミュニケーションを取ることが少なくなったとしても、周囲を気遣う文化こそが、ワークライフバランスがとれた組織を作ることにつながります。

【検討をオススメしたい企業】
 ここまでの中で、間接的に触れている部分もありますが、改めて「ワークスタイル変革」をオススメしたい企業をまとめますと、以下になります。

・ 社員のパフォーマンスを最大化したい
・ イノベーティブな会社にしたい
・ 新しい文化を啓蒙しやすい社風

 グローバルに広く展開している企業の方が、特に「時間の制約がなくなる」という効果がわかりやすく出る可能性が高いですが、そうではない企業であっても「無駄な通勤時間の削減」だけで、社員のパフォーマンスが上がることが期待できます。

 また、イノベーションと多様性に大きな関連があることは、既に多くのところで語られています。(参考書籍:多様性とイノベーション デヴィッド・スターク(著), 中野 勉 (翻訳), 中野 真澄 (翻訳) 日本経済新聞出版社 (2011/12/17))

 今まで大小問わず、何らかのシステム導入を経験している企業であれば、そこに文化の啓蒙が必要になることは、その苦労も含めてご存知かと思います。そして、ワークスタイル変革は、各業務や各部署で閉じられたレベルではなく、全社的な変革になるため、容易な導入にはならないことは想像に難くないでしょう。検討をされる際には、検討開始の段階から文化の啓蒙に注力されることを強く推奨いたします。

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2014年06月15日 (日)

青山システムコンサルティング株式会社

長谷川 智紀