ビッグデータ活用の先に来る世界

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 「クラウドコンピューティング」「ビッグデータ」「スマートフォン・タブレットPC」とここ数年IT業界ではこれらは3種の神器のように言われてきました。特に昨年はビッグデータ元年といわれたように、ビッグデータの活用に関する話題で盛り上がりました。

「データ・サイエンティストは21世紀でもっともセクシーな職業である」と言ったトーマス.H.ダベンポートによれば、データ活用の段階は

1)定例・臨時報告
2)調査(原因特定)
3)警告(対策の示唆)
4)統計分析
5)予測・推計
6)予測モデル
7)最適化

の順に進化していくと言われています。
今回はさらにその先に来るものはどのような世界か考察したいと思います。

 上記のデータ活用の進化の段階をもう少しわかりやすくチャート化すると下図のようになります。

画像(220x147)・拡大画像(640x430)


 上記のデータ活用における作業の主体はすべて人であり、人が意思を持ってデータ活用を進化させていくものです。

 すなわちアルゴリズム(計算の手順)の作成は人により行われています。

(1)人から機械学習の世界へ
 皆さんは「コンピュータ将棋」というものをご存じだと思います。プロの棋士を相手にコンピュータが次の差し手を考え対戦するものです。
 「GPS将棋」が2013年4月、プロ棋士の三浦弘行九段(当時は八段)を破ったことも記憶に新しいのではないでしょうか。

 過去の将棋プログラムのアルゴリズムは、将棋に詳しいプログラマーが将棋の知識と経験を駆使して手作りしていました。実は「GPS将棋」を含む最新の将棋プログラムのアルゴリズムは、人間が開発したものではなく、コンピュータがプロ棋士による数万局の対局データを分析し、指し手を「機械学習」することでアルゴリズムを自動生成していることをご存じでしょうか。

 これが可能になったのは、一つは、コンピュータの処理能力の向上やストレージ容量の拡大によりビッグデータを分析できるようになったことと、もう一つは、センサーデータなどにより様々な種類の「ビッグデータ」を集めやすくなったという二つの技術進化があります。機械学習では、学習対象のデータが多ければ多いほど、優れたアルゴリズムを生み出せるそうです。
 余談ですが、初期のコンピュータ将棋は王将が敵陣に入る「入玉」に対応できなかったそうです。学習対象としていたプロ棋士同士の対局では、入玉が発生するケースはほとんどなかったからです。

(2)データ・サイエンティストはいらなくなる?
 上述のように機械が人間のやり方を学んで、データからパターンやルールを導き出すのが機械学習の第1段階だとすれば、コンピュータが人間に頼らずに自身でパターンやルールを学習していくことが第2段階です。
 すなわち、まるでSFに出てくるあの人工知能です。

 「機械学習」の段階は、大きく「パターン認識」「分類」「異常検知」「未来予測」に分けられるそうですが、これを「ディープラーニング」といいます。
 ディープラーニングは、画像などの特徴をコンピュータが自ら抽出して、モデルを自動生成する手法です。人工知能の一手法で、人間の脳を模したシステム「ニューラルネットワーク」を複数組み合わせ、多層構造にして使うそうです。
Googleは1000台のコンピュータを使って、ニューラルネットワークを開発し、YouTubeの動画の中から無作為に1000万枚の画像を取り出し、それをニューラルネットワーク「Google Brain」に3日間連続して読み込ませました。

 画像を読み込んだ結果、Googleのニューラルネットワークは大量の画像データの中から、共通する輪郭の構成要素を見つけ出しました。この構成要素を特徴とする画像モデルを使って、改めて1000万枚の画像を分類しました。すると、「猫が写った画像だけ」「人の顔が写った画像だけ」等をコンピュータが分類していたことがわかりました。つまり、「猫とはこういうものだ」などという特徴をあらかじめコンピュータに教えなくても、コンピュータが自分で猫や人の画像を認識できるようになったということです。

 この自動認識されたパターンをもとに回りの状況や環境などを各種センサーからのデータと照合していくことで、「異常検知」や「未来予測」までもが可能になると考えられます。

(3)将来人がすべきこと
 最近ではGoogleによる自動車の自動運転や既に実用化されている自動ブレーキングシステムなど身の回りには人工知能的なものが急に増えだしました。
2011年初秋に電子ブックとして発行された『機械との競争』(エリック・ブリニョルフソン、アンドリュー・マカフィー共著)という本(日本語訳も発売済み)によれば、人間に残されるのは、スピードは必要でないが判断力やセンスを求められるような高度なスキルを要する仕事と、洗濯したタオルを折りたたむ作業のように、ロボットを設置するより非熟練労働者を使う方が安い仕事のみとなる、と予言しています。

 かつてはIE(Industrial Engineering)革命により人手による作業がロボットに置き換えられ、コンピュータの出現により複雑な計算や事務処理手続きが迅速化され、我々はその利便性を享受してきました。
 しかし、「将来はいかにコンピュータと共存して生きていかなければならないか、を考えざるを得ない時代に来ているのだ」と自覚した時に身の引き締まる思いがしました。
皆さんもご自身と会社の将来について今ひとつその存在意義を真剣に考えてみてはいかがでしょうか。

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2014年01月10日 (金)

青山システムコンサルティング株式会社

谷垣康弘