レガシーシステムとは?脱却せずに活用する可能性も検討できるのか

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「レガシー」とは「遺産」のことです。学問の観点では好印象なことばですが、情報システムの世界では古いシステムや技術を意味し、あまりよくないイメージが強いことばです。実際、古いことによる弊害は少なくありません。
しかし、古いこと自体が悪いわけではありません。レガシーシステムによくないイメージを持たれているとしたら、現行業務との間に何らかの問題が発生しているのかもしれません。その問題の内容によって、レガシーシステムからの脱却だけでなく、活用するという選択肢も考えられるでしょう。
システムの更新や刷新には多大なコストと時間を要するため、慎重な計画と段階的なアプローチが求められます。

記事の執筆

岩野 晃久
システムコンサルタント岩野 晃久

システムコンサルタント岩野 晃久

アプリ、インフラ、開発、運用など、幅広い知識と経験を活かし、クライアントの業務効率を向上するために提案していく。モバイルデバイスの活用に関する業務経験や、福祉分野の資格と経験、教育分野の資格と経験も活かしたコンサルティングも提供する。

レガシーシステムとは?

レガシーシステムとは、企業や組織で長年使用され続けている情報システムのことです。概ね以下のような特徴があります。

  • 古い技術で構成されている
  • 古い設計思想に基づいている
  • 安定稼働している
  • 運用実績がある

多くの場合、企業や組織の重要な業務を支えていて、事業を継続する上で、なくてはならないシステムになっています。
たとえば、メインフレームやオフコン(オフィスコンピューター)といったハードウェアや、ハードウェアと一体化したプログラミング言語などで作成されたシステムがあります。これらの技術は1980年代ごろまでは主流でしたが、2000年を前に新しい技術が台頭してきました。
しかしながら安定稼働していることや運用実績などから、今もなお現役で稼働していることがあります。

レガシーシステムの何が問題なのか

では、レガシーシステムの何が問題なのでしょうか。一般的に問題とされる事項を具体例とともにおさらいします。

処理のブラックボックス化

ブラックボックス化とは、プログラムの内容が複雑化し、内部の構造や動作が不透明になってしまう状態を指します。俗人化してしまっていることも珍しくなく、退職などによってシステムの仕様やプログラムの詳細が誰にも分からなくなってしまうことがあります。
処理のブラックボックス化による弊害は、一般的に以下のようなものが考えられます。

  • プログラムの改修が困難になる
  • トラブル対応が困難になる
  • 業務が固定化される(柔軟性が低下する)
  • 既存処理を前提とした不要な業務が発生する

これらが要因となって、ビジネス環境の変化に対応できない、システム連携の効率が悪い、小規模改修のはずが思いもよらないところに悪影響が出るといった問題につながります。
ブラックボックス化を避けるためには、適切なドキュメント管理や業務の引継ぎが重要ですが、すでに手遅れになってしまっている場合も少なくありません。

運用コストの増大

古いシステムを維持するために、主に2つのコストが必要になります。
ひとつは、古いハードウェアを維持するためのコストです。老朽化したハードウェアは、それだけ故障リスクが高くなっています。すでにメーカーが生産を終了していることも少なくなく、予備の部品を自分たちで確保することや、それらを使って修理できる人材を確保しておくことが必要になります。加えて、必要な部品や対応できる人材が減少してくると、希少性によって価格が高騰していく傾向にあります。
もうひとつは、古いシステム(ソフトウェア)を維持するためのコストです。古いシステムは長年の改修や機能追加により構造が複雑化し、プログラムの改修やトラブル対応に多くの時間を要する傾向があり、結果として費用が増大します。また、システムの運用上、人の手による作業を介することが前提になっているために、運用コストを低減できない要因になっている場合があります。

情報セキュリティ対策が困難になる

利用しているハードウェアやソフトウェアが最新のセキュリティ技術や暗号化技術などに対応できず、脆弱性を抱えたまま運用されることが多くあります。システム構築当時には考慮されていなかった攻撃手法が時代とともに増加し、情報セキュリティリスクも増大しています。最新のセキュリティの考え方とは根本的に異なっている場合があります。
また、サポートが終了したOSやツールやソフトウェアなどを使い続けている場合、新たな脆弱性が発見されても修正プログラムが提供されないため、セキュリティリスクを内包したまま運用せざるを得なくなります。

技術者の確保が困難になる

システムを構成する重要な要素であるハードウェアやソフトウェアやプログラミング言語そのものを扱える人が減少してしまい、要員の確保が困難になってしまいます。単に古い技術を勉強する機会がなかったため知らないというだけでなく、習得しても他で活かすことができないため敬遠されてしまい、技術の継承が困難になってしまいます。
要員の希少性は、必然的に価格の高騰を招きます。

脱却する場合は現状の分析が必要

レガシーシステムを脱却するために、新しいシステムを導入すればすべて解決するのでしょうか。それだけでは問題解決は困難なはずです。
現状のシステムと業務を照らし合わせて、何が問題でどう解決するのが最善なのか、しっかりと分析すべきです。
問題点が明らかになっていないと、システム導入の目的が曖昧になってしまい、必要性の検証や効果の測定が困難になります。
なおコストに関しては、システム導入分だけでなく、一定期間(5年程度)の運用を含むTCO(総保有コスト)も考慮してください。

システムの問題点を分析

新しくシステムを導入する場合には、現状の問題点を整理して原因を分析する必要があります。現行のレガシーシステムを使った業務のどこに問題点があるのかの見極めが必要です。ブラックボックス化している機能や処理がある場合には、それを紐解く必要もあります。
現行システムの課題を正確に把握しないと、新システムでも同じ問題が発生し得ます。業務の流れやユーザーの実際の利用状況を分析することで、不要な機能を削減し、最適な設計が可能になります。業務の流れを効率化することも可能です。

最適な脱却方法を見極める

レガシーシステムからの脱却方法は、概ね以下の3パターンが考えられます。

全体刷新
システム全体を刷新します。業務全体からつくり変えることになるため、効率化などの効果は大きくなることが期待できます。その分、必要なコストも大きくなります。
部分的な機能刷新
システムの一部を刷新します。刷新する単位は、プログラムや機能や処理のかたまりなど、様々です。既存処理を活用できる場合に有効で、コストを抑えられる可能性があります。
環境刷新
ハードウェア部分を中心に刷新します。具体的には、最新の機器への載せ替えや、オンプレミス環境で稼働しているシステムをクラウド環境に移行することが考えられます。

どの方法による脱却が最も効果的かは、事前に実施する問題点の分析の結果によって異なります。問題点の根本原因がどこにあるのか次第で、最適な脱却方法が決まります。

問題点を解決することでレガシーシステムの活用は可能

レガシーシステムというだけで、すなわち悪ということではないはずです。現在でも稼働しているということは、安定的に稼働を続けられているという証左でもあります。レガシーシステムを利用した業務で大きな支障がないのであれば、利用継続も選択肢のひとつとなり得ます。
ブラックボックス化してしまっている場合には内容の解明が必要ですが、情報セキュリティや技術者不足に関しては、状況によっては問題にならないこともあります。たとえば、完全にスタンドアロンで稼働しているシステムであれば、情報セキュリティリスクはある程度低いと判断できる場合もあります。古いプログラムをメンテナンスできる人を確保できなくても、AIを活用することで、そのプログラミング言語を扱った経験が少ない技術者でも迅速に対応できる可能性があります。
システムが古いからという理由だけで刷新するのではなく、問題を解決するための刷新になるように検討を進めるべきです。

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2025年06月16日 (月)

青山システムコンサルティング株式会社

岩野晃久