プログレスバーだけでは足りない

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仕事でも、プライベートでも、さまざまなシステムを利用して活動を行っている現代では、システムによる待ち時間は、例え1回につき1秒弱であったとしても合計では馬鹿になりません。特に、仕事で利用する業務用システムでは、利用頻度が高いため顧客満足度に直結します。
しかし、扱っているデータの量やかけられるリソースの関係上、ユーザーの求めるパフォーマンスを実現するのが難しい場合も多く存在します。

そんなジレンマの中、徐々に改善を進め、パフォーマンスの向上に腐心するわけですが、顧客満足度の向上は、何もパフォーマンスの向上だけが対策ではありません。

顧客満足に繋がる1つの要素として「オペレーションの透明性」を『Ryan W. Buell, “Operational Transparency”, HBR, March-April 2019』からご紹介します。

 

【はじめに】

2020年東京オリンピックのチケット一次抽選の申し込みに申請者が殺到し、一時は100万人待ちで1時間以上もチケット申込サイトにアクセスができない状況となりました。

通常であれば1時間以上もとても待ってはいられないのですが、待ちの進行状況を伝えるプログレスバーと共に画面に表示されていた「ご自身の前に並んでいるユーザー数」と「見積もりのお待ち時間」のおかげで不満を言いつつも私は待つことができました。

想像してみてください。「ご自身の前に並んでいるユーザー数」と「見積もりのお待ち時間」の表示が無く、プログレスバーのみが表示された画面であった場合、みなさまは待つことができたでしょうか。

ではなぜ、「ご自身の前に並んでいるユーザー数」と「見積もりのお待ち時間」が表示されていると待つことができるのでしょうか。それは、これらの情報からユーザーは現在のオペレーションの状況と、このサービスの価値をより正しく認識することができたからです。

 

【オペレーションの透明性の効果】

Ryan W. Buell (2019) では、ユーザーのために行っているオペレーションの内容をユーザーに公開した場合、待ち時間の長さに関わらず顧客満足度が上昇したと言っています。

よくある「面白い画像」や「有益な販促情報」や「ミニゲーム」のようなもので待ち時間を紛らわす趣向のサイトなどと比較してもオペレーションを公開した場合の方がより効果的であったと述べています。

それはなぜか。
人は、見えないものは正しく評価できず、取るに足らないものと過小評価してしまう傾向があるからです。
オペレーションを公開した場合、ユーザーは状況が把握でき、行われていることの価値をより正しく判断できます。そして待つ理由に納得できるため満足度に繋がります。待ち時間を紛らわす趣向ではこの点は改善されないとわかります。

顧客満足度とは、「顧客の許容 - 負の実績」に依存するものと考えると、オペレーションの透明性の効果は「顧客の許容」の項を大きくする効果があると言えます。
(システムのパフォーマンス向上は「負の実績」の項を小さくする効果にあたります。)

 

オペレーションの透明性の効果はこれだけではありません。

一つには、ユーザーの協力を取り付けることができます。
ユーザーがオペレーションの状況を把握できれば、対策を講じることができ、満足度が低い状況を自ら回避してくれます。
オリンピックチケットの例で言いますと、待ち人数の少ない時間帯を探し、ユーザー側で自発的にアクセスの分散を行ってくれることが期待できます。

もう一つには、顧客だけでなく、従業員側の満足度の上昇にも繋がります。
オペレーションの透明性を発展させていくことで、従業員側がユーザーのリアクションを感じ取れるようになり、ユーザーに価値を提供できていると認識できるようになれば従業員満足度の上昇が期待できます。

 

【まとめ】

オペレーションの裏側をユーザーに公開することで、ユーザーがオペレーションの価値を正しく認識してくれるようになり、顧客満足度の向上に繋がるという観点を紹介しました。

一口に公開と言っておりますが、もちろん何でもかんでも公開すれば良いというものではありません。Ryan W. Buell (2019) の中では、何を・いつ・どのように公開すればよいかといったことも述べられておりますが、つまりは「価値があるものを効果的に伝え、過小評価にならないようにする」というのがポイントです。

顧客満足度を考える際には、オペレーションの透明性の観点をご検討いただける機会になればと思います。

 

<参考文献>
 Ryan W. Buell, “Operational Transparency”, HBR, March-April 2019

 

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2019年10月14日 (月)

青山システムコンサルティング株式会社

宿谷大志