コラムカテゴリー:DX(デジタル・トランスフォーメーション), ITコンサルティング, 業界動向
はじめに
この1年ほどで「Web3.0」という言葉が急速に広まっていると感じます。
先月末2022/9/30には、デジタル庁にて「Web3.0研究会」の開催について発表されました。
その目的について、
【「デジタル社会の実現に向けた重点計画」(令和4年6月7日閣議決定)等において「ブロックチェーン技術を基盤とする NFT(非代替性トークン)の利用等の Web3.0 の推進に向けた環境整備」が盛り込まれたことを踏まえ、所要の検討を行うべく、Web3.0 研究会を開催する。】
とされています。
2021/12/24時点での「デジタル社会の実現に向けた重点計画」では「Web3.0」にフォーカスは当たっていませんでしたが、そこから半年足らずの2022/6/7改定版でデジタル化の基本戦略の要素として「Web3.0の推進」が掲げられるような状況になっています。
「Web3.0」については、今夏の参院選でも自民党が公約に明記していますし、岸田首相も「戦後に次ぐ第2の創業ブーム」を目指すための環境整備のために「Web3.0推進」に意欲を示し、今月(2022年10月)招集された臨時国会での所信表明演説でも触れています。
このように、ITシステム・Web界隈のみならず、政治・行政でも注目されるような社会的な潮流になってきました。
そこで「Web3.0」とはどのような概念で、なぜ注目されているのかを見ていきたいと思います。
「Web3.0」とは何か
はじめに言ってしまうと、「Web3.0」という用語に対して明確な定義が定められているわけではありません。インターネット(Web)利用の発展を3段階に分けて捉える分類と考えるとよいでしょう。
「Web3.0」とは何かを理解するためには、まずその前段階がどのようなものだったかを理解するとわかりやすいと思います。
- Web1.0(1990年代):テキスト情報中心のコンテンツをごく一部の発信者が一方的に発信。
- Web2.0(~2020年頃):画像・動画も含めた多様なコンテンツでの双方向でのコミュニケーション。
Web1.0、2.0の時代にはコンテンツ発信者や、特定のプラットフォーマーに依存する「中央集権型」ともいえる状態でした。
それに対して、「Web3.0」は特定の管理者に依存しない「分散型(非中央集権型)」という点が特徴といえます。特定のサービスやプラットフォームに依存するのではなく、個人がデータを所有・管理し、自由に個人同士がつながる世界観です。
ブロックチェーンによる相互認証やデータの唯一性・真正性が保証されていることがその根幹にあります。
具体例
現時点では「これが『Web3.0』を具現化したものだ」とイメージできるようなシーンは日常生活のなかでは少ない印象です。
ただ着実に事例は広がっており、よく見聞きするところでは、仮想通貨やNFT(非代替性トークン)アートの取引は「Web3.0」の段階にあるWeb利用といえるでしょう。
また、メタバースにもNFTの技術が活用されています。メタバース空間でのデジタル資産にNFTで唯一性・真正性を保証することで、そのメタバース空間での「モノの価値」が保証されます。
既にビットコインをはじめとする仮想通貨は、国家が中央集権的に管理してきた通貨という社会基盤すら代替しうるようになっています。
(現時点での成否はともかく、エルサルバドルのように実際にビットコインを法定通貨にした例もあります。)
「Web3.0」を背景として劇的に社会が変革されていく可能性が多いにあります。
今後の課題
中央集権的ではなく、国境すら意識しないようになりうるなかで、規制と振興のバランスをとりながらどのようなルールにすべきか議論されていくでしょう。
例えば、NFT資産の会計上の取り扱いや課税面の見直しが金融庁で議論されていますし、資産の所有権をどう扱うか、知財をどう認定するかといった法制度等、論点は多岐に渡ります。
これらの議論が各関係省庁でそれぞれされながら、デジタル庁が横串を通して国として整合性のある仕組みとしていくことが求められます。
自由な技術活用で振興を図りつつも、中央集権的に管理できないからこそ反社会的な利用がされるのではないかという懸念に対しては一定の規制も必要と思われます。
まとめ
見てきた通り、「Web3.0」は抽象的な概念であり、まだまだ今後どうなっていくか見通せません。
ただ今回ご紹介したようなキーワードを意識しながら、自社のビジネス環境への影響が出ないか、自社のビジネスに活用できることはないか、アンテナをはっておくことで、急激な変化が実際に起こったときにも対応しやすくなるのではないでしょうか。
特に税制や資産の定義など、ビジネスに直結する社会制度にも大きな変化が起こりうる大きな潮流と思われますので、日ごろから意識しておくことが大切です。
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2022年10月10日 (月)
青山システムコンサルティング株式会社