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■はじめに

2023年上半期の大きなトピックを挙げれば、生成AI(Generative AI)を外すことはできないでしょう。
2023年下半期になった現在においては、既に幻滅期に入ったという論調もありますが、
新刊書籍のタイトルを並べてみれば、まだまだ注目度は高いように見えます。
とりわけ、対話AIに分類されるOpenAI社のChatGPTによる業務効率化のノウハウは、
多くの方から共有されています。

そのノウハウの1つである「生成AIへの問いの投げかけ方」は
「プロンプトエンジニアリング」とも呼ばれ、
そのスキルを使いこなす「プロンプトエンジニア」という職種も生み出されました。
上手に問い(プロンプト)を書けることで個人の業務を効率化できることは、
既に体感されていたり、実践されたりしている人も多いかと思います。
では、企業および組織として上手に活用できている人になると・・・どうでしょう。
そこまで多くないのではないでしょうか。
企業および組織として活用することを考えると、個人で活用するときと異なり、
リスクの回避および低減を先に考えなければなりません。

リスクの回避および低減には、ガイドラインを作成することが有効です。
インターネット上に公開されている情報を利用することによって、
効率よく自社および自組織に合ったガイドラインを作成することができます。

■参考になるガイドライン

「生成AI ガイドライン」をキーワードにGoogleで検索をすると、
官公庁などが作成したガイドラインが上位にでてきます。
現在、その中で多くの企業が自社のガイドラインを作成するときに参考にしているのは、
以下の「ガイドライン作成のガイドライン」です。

  • 一般社団法人ディープラーニング協会

リンク先には「生成AIの利用ガイドライン【条項のみ】」というバージョンだけでなく、
「生成AIの利用ガイドライン【簡易解説付】」というバージョンがあり、
その解説を読むことで各条項の意図を理解しながら作成することができます。

作成されたガイドラインの事例としては、東京都職員向けに作成された以下のガイドラインが、
とてもわかりやすくまとまっており汎用性が高いと思います。

  • 東京都デジタルサービス局

■ガイドライン作成の前に

必要な項目を埋めるだけであれば、
上記のドキュメントを参考にしてガイドラインを作成すれば良いのですが、
それでは意図した生成AIの活用にはつながりません。
意図した生成AIの活用につなげるためには、ガイドラインを作成する前に以下の検討が必要です。

  • 自社方針
  • ポリシー確認
  • 構築パターン

「自社方針」では、大きな方向性として「利用促進」にするのか「利用制限」にするのか検討します。
企業や組織が持っている情報やポリシーによっては
「全面禁止」という方針も決して間違いではありません。
もし、「利用促進」にするのであれば、合わせて「利用の目的」を明確にします。

「ポリシー確認」では、AI利用を通じた情報漏洩や不適切利用について、
既にあるポリシー(社内規程や情報セキュリティなど)と照らし合わせて評価します。
例えば「機密情報を用いた質問による情報漏洩」について評価をする場合、
既存のポリシーに「機密情報のランク定義およびランクごとの取扱いルール」が定められていれば、
そこに記載されている内容と照らし合わせます。
その結果、ポリシーに記載すべきリスクであると判断されれば、
既存ポリシーに加筆修正をすることになります。

「構築パターン」では、導入の目的を達成するために、どのレベルから自社で構築するのか検討します。
自社専用のサーバーを構築するのか、各ベンダーが提供するサービスをAPIで利用するのか、
自社独自の追加学習の仕組みは構築するのか、構築するならどんな方式で構築するのか、
などの大枠を決めます。

これらの検討結果から、利用開始手順や利用する業務領域などを決めて、
ガイドラインに落とし込んでいきます。

■ガイドラインを作成したら

作成したガイドラインは、自社および自組織全体に周知します。
仮に、利用するユーザーを絞り込む場合にも、ガイドラインは全ユーザーに周知します。
つまり、社内規程などのポリシーと同等の取り扱いをするということです。

もし、積極的に生成AIを利用するのであれば、
作成したガイドラインに基づいて利用環境を整備していきます。
業務タスク(※)に生成AIを組み込むこともスコープに入れるのであれば、
利用環境および業務タスクを継続して改善するプロセスを構築する必要があります。

(※ ここでの業務タスクとは、業務プロセスの中の1つの手順のことを指しています。
  現時点では、生成AIを業務プロセス全体に組み込むことは困難です。)

■おわりに

DXも「DXに取り組むこと」が目的化してしまうと効果が得られないのと同じく、
生成AIも「生成AIを導入すること」が目的化してしまうと効果が得られません。
ガイドラインの作成を通じて、生成AIを導入する目的を明確にして、利活用を進めることをお勧めします。

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2023年10月06日 (金)

青山システムコンサルティング株式会社

長谷川 智紀