コラムカテゴリー:情報戦略/業務改革
近年、ベンダー選定における提案書及び見積書に対する第三者評価の依頼が増えています。依頼を受けた際、担当者に第三者評価を依頼した経緯を必ず伺っていますが、決裁者である経営層からの指示であり、社内決裁を得るためという理由が大部分を占めています。
また、皆さんは第三者評価という言葉から何を連想しますか?私は、企業不祥事、年金記録問題、原子力発電所の再稼働問題などを連想しました。皆さんも同様な事象を連想されるのではないでしょうか?上記事象は一見、関係性がないように見えますが、全て第三者評価を受けざるを得ない状況になっている点が共通しています。
つまり、第三者評価とは、「受けたいので受ける」という積極的なケースよりも、「受けざるを得ない状況なので受ける」という消極的なケースが多いのです。
そこで今回は、情報システムの第三者評価の「費用」と「効果」を確認することで、受けざるを得ない状況に至るまで第三者評価を受ける必要性がないのかどうか考察します。
まずは、「費用」についてです。情報システムの規模にもよりますが、提案書及び見積書の評価であれば、弊社では数十万から百数十万程度でサービスを提供しています。安い金額ではありませんが、数千万、数億円かけるシステムの契約に関わることと考えれば、決して高い金額ではないと思います。
次に、「効果」についてです。「効果」を、一概に測ることは困難です。そこで今回は、情報システムのコスト削減額を「効果」と定義します。まず、情報システムのコストは、初期費用と保守費用の二つに分けることができます。
初期費用は、稼働までに掛かる費用と考えると、提案書及び見積書を基に結んだ契約が重要です。第三者評価では、蓄積されたノウハウや他社事例に基づいて査定することにより、提案書及び見積書の妥当性が判断できない部分を明らかにします。その結果、多くの場合に費用は下がります。
続いて保守費用です。社団法人 日本情報システム・ユーザー協会の「平成23年度 ソフトウェア開発管理基準に関する調査報告書 図表7-71 保守費用分析」には、次のようにあります。
自社開発において、初期費用をAとした場合、初期費用+保守費用(5年分)は、2.23A。また、パッケージ導入においては、パッケージ本体の初期費用をB、アドオン開発費用をCとした場合、初期費用+保守費用(5年分)は、2.21B+3.46C。
上記より、保守費用(5年分)は、初期費用の同等かそれ以上となり、コスト削減を考える上で、保守費用が重要であることが分かります。更に、ITベンダーには、初期費用の一定割合を保守費用に設定する企業も見受けられます。つまり、保守費用を初期費用の一定割合と設定しているITベンダーとの契約であれば、初期費用の削減は、初期費用削減額以上の意味を持つのです。
上記内容をまとめると、第三者評価を受けるために、数十万から百数十万程度の「費用」が必要となります。一方、「効果」としては、初期費用の削減が見込めます。更に、保守費用を初期費用の一定割合と設定しているITベンダーとの契約であれば、保守費用の削減にもつながるのです。
また、今回は触れていませんが、「要求側と提案側のミスマッチ防止」や「提案側からより良い提案を引き出させる」など、コスト削減以外の「効果」も多くあります。今のところ、消極的に捉えられることが多い第三者評価ですが、受けざるを得ない状況になる前に、第三者評価の活用を一度検討してみてはいかがでしょうか。
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2013年02月18日 (月)
青山システムコンサルティング株式会社