「隠れた前提」への意識

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報告資料や口頭説明の場においては、丹念に論理展開すると内容が冗長になってしまうため、ある程度、前提となる情報を省略することが一般的です。しかしこの省略を無意識におこなうと、時としてミスコミュニケーションを招いてしまいます。

先日、ある企業のITコンサルティングの場で経営層ヒアリングを実施した際、情報システム担当者から次のような説明を経営層の方々にしました。

「自社システムは導入して5年経過したから、入替の検討が必要です。」

この報告の中で省略された情報を、聞き手である経営層は理解することができるでしょうか。

 

「隠れた前提」が落とし穴になる

この報告を丹念に論理展開すると、以下の3つの情報が省略されていました。

省略されていた情報①

「導入して5年経過したから、自社システムのサーバ保守対応期限が到来するので、今後自社システムのサーバハードウェアが故障した際は修理することができない。」
→自社システムのハードウェアの面で安定稼働にリスクがあるので、入替えの検討が必要です。

省略されていた情報②

「導入して5年経過したから、近い将来、自社サーバが採用している Windows OS の不具合やセキュリティ上の問題点へのプログラム修正対応を受ける事ができなくなる。」
→自社システムのソフトウェアの面で安定稼働にリスクがあるので、入替の検討が必要です。

省略されていた情報③

「現在の自社システムは、5年以上前の定めた方針や戦略および業務に基づいた要求機能であるため、現在のビジネスには過不足がある」
→自社システムは現在のビジネス適した機能を有していないので、入替の検討が必要です。

上記の①~③の内容が、話し手である担当者によって無意識に省略された発言であれば、自社システムの入替理由や情報は一切共有されない可能性があります。
なぜならば、情報システム担当者の頭の中では、5年経過したシステムにおいて、こういった理屈は当たり前すぎて、口にするに値しないという前提が無意識にあるからです。

時としてこの無意識の省略が、経営判断や方針決定の落とし穴になります。

 

なぜ「隠れた前提」が生まれるのか

論理展開である程度は必要とされる「省略」のなかで、しばしばおこなわれるのはルールや常識といった「大前提」の省略です。

ルールや常識が省略されるのは、情報システム担当者の例と同じように、話し手の中ではそれが当然のこととしてとらえられているからです。しかしそれらの省略により、相手に自分の真意が伝わらなくなってしまう場合があります。また自分の中で認識しているルールそのものが誤っていた場合は、誤り自体に気づく事が難しい状況です。
結果、誤解を招いたり、自分の期待とは異なる反応を引き起こしたりすることがあります。

逆に聞き手の立場から言えば、話し手の根拠となっている「隠れた前提」を的確に知ることが重要です。

 


自分にとって至極当然の前提でも、聞き手によって推測する前提条件に違いがでてしまい、ミスコミュニケーションを招いてしまうケースは多く見受けられます。話し手・聞き手の双方の立場において、例示した①~③のように、「隠れた前提」がないか考える意識をすることで、交渉やコミュニケーションがよりスムーズに、また効率的なものになると思います。

 

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2019年03月12日 (火)

青山システムコンサルティング株式会社

畠山健