コラムカテゴリー:DX(デジタル・トランスフォーメーション), ITコンサルティング, 情報戦略/業務改革, 業界動向
スタッフと一度も会わない飲食店の体験
当社がオフィスを構える神楽坂エリアには、嬉しいことに数多くの飲食店が店を構えています。個性的な店舗も多く、さまざまな楽しみ方ができる街です。
そんな神楽坂エリアで、昨年(2024年)、思わぬ体験をしました。
とある飲食店(今後、飲食店Aとします)を社員4人で利用したところ、何と入店から退店まで、一度もスタッフと会わない・・・ というお店だったのです。
具体的な特徴・体験は以下のとおりです。
予約 :
当然WEB予約です。
入店 :
店舗入口のテンキーロックに、事前に案内のあった番号を入力して入店。事前確認が不十分だった私は、お店への入り方がよくわからず、あたふたしてしまいましたが、しっかりと事前の案内はありました。
入室 :
店舗入口に設置されている下駄箱(予約者の名前が記載されている)で、部屋の鍵を受け取り、個室に入室。
大きな液晶パネルがウェルカムボードにもなっており、メッセージもありました。
飲食 :
ドリンクや料理が用意されているので、自由に楽しみました。
室内にカメラがついていたので、どこかでスタッフが様子を見られるようになっていたようです。
退室 :
一定時間がすぎると、ずっと小さい音量だったBGMの音が大きくなり(曲も変わった?)、液晶パネルにも退室時間が近いことのメッセージが表示されました。
会計・退店 :
会計はWEB予約時にクレジットカードを登録してあるので、店舗での会計はありません。
適当な時間に退店しました。
このように、入店から退店まで、なんと、一度もスタッフと会うことがありませんでした。
なぜスタッフと会わずに済むのか
思いがけず、飲食店でおもしろい体験をしたわけですが、なぜ「スタッフと一度も会わない飲食店」が成り立つのでしょうか。
そこには、IT・システムの活用と、アナログの対応の組み合わせという工夫がなされていました。
IT・システムの活用
まずは、WEB予約ということで、人手がかかっていません。
そのタイミングで、クレジットカード番号を登録することで、最後の会計もスタッフが出てくる必要がなくなります。
室内のカメラについても、IT・システムの活用の一つです。単純に、スタッフが部屋に足を運ばなくても、室内の状況を把握することができます。あとは、実際にはどのように活用されているかは不明ですが、技術的には来店者の顔・表情などから、年齢・性別・感情などの分析もできるはずです。
退室時間についても、液晶パネルやBGMを活用することで、スタッフが介在する必要がない仕組みでした。
なかなか帰らずに居座った場合に、どのようになるのか・・・
とても気になるところですが、さすがに私はいい大人なので、今後も体験することはなさそうです。
アナログの対応
部屋の鍵は物理鍵でした。こちらもスマートロックなどを導入することで技術活用をすることは可能でしょうが、物理鍵で十分ですし、かえって雰囲気があっていいなと思いました。
ドリンクや料理は自分たちで冷蔵庫から取り出したり、並べたりということで、アナログの部分でした。今後はひょっとしたら、配膳ロボ(ファミレスなどでは良く見かけるようになりました)などを活用していく可能性はありそうです。
「スタッフと一度も会わない飲食店」のメリット
結局のところ「スタッフと一度も会わない飲食店」のメリットは何なのか、解説します。
最低限の人数で飲食店運営ができる
最低限の人数で飲食店の運営ができることが、一番のメリットでしょう。
飲食店は仕込み、営業(接客・調理)、片付けという一日の中で、どうしても営業中の接客で人を多く配置する必要があります。
コロナ禍以降、飲食店も人手不足が顕著で、営業日数を減らしたり、営業時間を短くするといった対応も目立っています。人を集めるにも、時給も高騰しています。
このような環境下で、最低限の人数で営業できることは、大きなメリットです。
利用者はプライベート感を満喫できる
利用者にとってもメリットがあります。
飲食中に、同席者以外と一切コミュニケーションを取らずに済むので、プライベート感を満喫できます。
別荘にきたような体験ができます。
また、ドリンクや料理のオーダーや、会計での待ち時間がかからないのも良い点です。
「スタッフと一度も会わない飲食店」のお話し、いかがだったでしょうか?
確かに IT・システムは活用されていますが、実は新しい技術が使われているわけではないこともポイントです。うまくITとアナログを組み合わせて、新しい飲食店の形態を生み出した例だといえます。
「DX(デジタル・トランスフォーメーション)」というキーワードがでてきて5年以上経ちますが、最新の技術を使わなくても、このような新しい取り組みはできるのです。
飲食店での体験を通して、最新技術の活用そのものが目的になったり、DXへの取り組みが形骸化しないよう、本来の目的を明確に、強く意識して IT・システムを活用することが重要であることを強く感じた出来事でした。
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2025年01月09日 (木)
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