コラムカテゴリー:ITコンサルティング, 情報戦略/業務改革
先日、日本経済新聞で上場企業の業績が好調であると公表されました。
2017年4~6月期は7割強の企業で純利益が増えたようです。
至極当たり前の話しですが、『利益=売上-費用(原価)』ですから、純利益が増えたということは売上が上がったか、コストが下がったか、大きくはどちらかになります。
営業部門以外の本社組織に所属する方であれば、「業務効率化によるコスト削減」というミッションを一度は与えられた方も多いのではないでしょうか。
それでは、業務を効率化したら本当にコストを削減できるのでしょうか?
「どのように業務を効率化するのか」という方法を解説する書籍や記事は多いのですが、「業務を効率化したら本当にコストを削減できるのか?」という質問に対する解説は記載されていないことが多いです。
なぜなら、業務効率化の方法を論じるうえでは、業務効率化によってコスト削減ができる前提となっているためです。
しかし、社内で業務効率化を推進する方にとっては経営層や上長へ報告する際に必ず説明を求められるのが、「本当にコストを削減できるのか?」「どのくらいコストを削減できるのか?」という内容です。とても重要なポイントですので、本コラムで解説します。
まず始めに以下の内容をご覧ください。
この考え方は正しいと思いますか?
※人件費等の数字は例です。
【例1】
業務フローの見直しとAシステムの導入により販売管理の業務効率化を行う
↓
業務効率化により業務時間を160時間削減できる見込み
↓
「160時間=8時間×20営業日=社員1人分の業務」であるため、社員1人分の業務を削減することができる
↓
社員の人件費が400万円/年であるため、年間400万円のコスト削減が可能
業務効率化による削減効果を定量的に試算するという意味では間違ってはいません。
では、業務効率化により社員を1人減らして400万円分の人件費を削減できるのでしょうか?
答えは、多くの場合「NO」です。
なぜかというと、実態としては以下のとおりになることが多いからです。
【例2】
業務フローの見直しとAシステムの導入により販売管理の業務効率化を行う
↓
業務効率化により業務時間を160時間削減できる見込み
↓
販売管理業務に携わる社員は8人いて、1人が行う業務を20時間削減できる見込みであるため、合計で160時間分(=8人×20時間)の業務を削減することができる
↓
社員の人件費が400万円/年であるため、年間400万円のコスト削減が可能
業務効率化による定量的な削減効果は先ほどと同様、年間400万円です。
ただし、実際に社員1人を減らして400万円分のコストが削減できるわけではありません。なぜなら、この販売管理の業務は8人で行っており、8人が行う業務が20時間ずつ削減されているためです。
実態としては、受注業務の担当者、仕入業務の担当者・・・など8人それぞれに役割があるので、全員の業務が少しずつ効率化されたからといって、いきなり社員を1人減らすということは多くの場合現実的ではありません。
このように、業務効率化によって社員数を減らし、人件費を削減できると認識されている方が実は多くいらっしゃいます。実際に、弊社のクライアント様から「今回行う業務効率化により社員数を減らせるということですよね?」と問われることも少なくありません。
もちろん、業務効率化により社員数を減らせるケースもあります。しかし、中小企業においては始めから少人数で業務を行っていることが多いので、実際には社員数を減らせないケースの方が多いと考えられます。
それでは、業務効率化により社員数を減らすことができずコストを削減できないのであれば、何のために業務効率化を行うのか?と思う方もいらっしゃるかもしれません。
当然、業務効率化を行う意味はあります。
先ほどの例2で言えば、社員1人あたり20時間の業務を削減できるので、その20時間を活用して別の業務を行うことができます。
例えば、以下のような業務です。
- さらなる業務効率化に向けた検討を進める
- 新しい営業施策の支援を行う
- 新システムの導入検討を行う
- 各種資料や運用ルールの整備を行う 等
経営視点では、業務効率化によって生み出した人件費400万円分を活用して、新しい投資ができるという捉え方になります。業務効率化を単なるコスト削減と捉えるだけでなく、新たな投資と捉えて、社内で業務効率化の検討を進めてみてはいかがでしょうか。
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2017年08月18日 (金)
青山システムコンサルティング株式会社