認知的不協和は恐ろしい ~本人では自覚できない?~

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「給与が高い人ほど、実力が高い人ほど、仕事の不満を良く言っている」

 

こんなことを思ったことはありませんか?
コロナ禍により1年以上も職場の飲み会などから遠ざかっている方も多いと思いますが、かつての飲み会の場を思い出していただいても、こういった傾向はあったのではないでしょうか。今回は、この傾向の一因となり得る「認識的不協和理論」についてお話しします。

 

認知的不協和理論とは、心理学者のレオン・フェスティンガーにより提唱されたもので、以下のようなものです。

<認知的不協和理論>

自分の意に沿わない「嫌な行動の強要」をされた際、人はストレスを感じます。これに対し、十分な「報酬」が提示されればこのストレスは解消されバランスが取れるでしょう。ところが、下式のようにバランスが取れない場合ストレスが解消されません。これを「認知的不協和」と呼びます。

◎【認知的不協和な状態】:「嫌な行動の強要」>「報酬」

認知的不協和が発生すると、人はそれを解消しようと試みます。上式を元にするとその方法は下記の2つが考えられます。

◎【解消法1】:右辺の「報酬」を増やしてバランスを取る
◎【解消法2】:左辺を「嫌ではない行動」と無意識に思い込みバランスを取る

認知的不協和理論の驚くべきところは、解消法1の手段を取れないとき、人は解消法2の手段を取ってしまうということと、認知的不協和の解消の方を優先してしまい、「嫌な行動」を「嫌ではない行動」と認知を無意識に歪める可能性があるということです。

 

冒頭の例をこの認知的不協和理論で分析してみますと下記のようになります。

◎【給与が高い人】:「嫌な行動の強要」=「報酬」とバランスは取れているため認知的不協和は発生していない。ただし、嫌な行動を強要されている事実は認識している状態。

◎【実力が高い人】:「嫌な行動の強要」>「報酬」と認知的不協和が発生している場合、解消法1で「報酬」を上げてバランスを取ろうとする。もちろん、嫌な行動を強要されている事実は認識している状態。

◎【実力が低く、給与が低い人】:「嫌な行動の強要」>「報酬」と認知的不協和が発生している場合、解消法1が取りにくいため、解消法2で「嫌な行動の強要」を「嫌ではない行動」と無意識に思い込みバランスを取ろうとする。この時、嫌な行動を強要されている自覚が低減する。

 

チームメイトの状況を把握する必要がある時、この解消法2を取ってしまっている人がいた場合、本人の認知が書き変わってしまっているため、単純に現状を聞いたところで正確な回答は得られません。言葉の端々、非言語部分や態度、あるいは稼働時間などの客観的なデータを注意深く観察しなければ正しく状況を把握できない可能性があります。コンサルタントコラム「テレワークで生じるコミュニケーションの問題点と対策」でも指摘されている通り、テレワーク環境下では益々難しくなってくる部分だと考えます。人にはこういった性質があることをよくよく気を付けなければならないと思いました。

 

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2021年09月21日 (火)
青山システムコンサルティング株式会社
宿谷大志