弊社メールマガジンで配信した「コンサルタントのつぶやき」です。
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先日、日々の対話における「アウトプット」と「インプット」の奥深さを実感する出来事がありました。
日常業務から離れて実施した、4名でのオフサイトミーティングでのことです。
参加人数が絞られている分、密度の濃い議論が交わされていました。
記事の執筆
システムコンサルタント久保田 一樹
メーカー系SIerに入社後、メガバンク案件でプロジェクトマネジメントを経験する。多くのステークホルダーと厳格なスケジュールのもと、プロジェクトの成功に貢献する。その後、信用調査会社で社内システムの要件定義から移行までを担当し、利用者視点の設計で高く評価される。 これらの経験を活かし、現在は開発者と利用者双方の視点を持つコンサルタントとして、PMO支援を中心に活動している。
そこには、普段から私の業務の壁打ちに乗ってくれているAマネージャも同席していました。
Aマネージャは、その思考の鋭さゆえに社内の一部では「心理的安全性が低いのでは?」と誤解されがちな一面があります。
しかし、私は週に2回、1時間ずつ合計2時間も1on1ミーティングをお願いしているほどで、実際には全くそのようなことはなく、信頼関係を構築できていると感じています。
そのような背景もあり、私は皆の前で、少しユーモアと親しみを込めたジョークのつもりで、このような発言をしました。
「Aマネージャとのミーティングは正直怖いし、始まる前は『やりたくないな』とすら思います」
私の真意はこうです。
「ミーティングで『なぜ?』と鋭い問いを立てられ、自分の考えの浅さを突きつけられることへの恐れにも似た緊張感がある。
だから始まる前は少しネガティブな気持ちになるけれど、終わった後はいつも思考が整理されていて『やってよかった』とポジティブになれる。」
成長のための負荷に対する「怖い」という表現でしたが、言葉足らずで、周りのメンバーに「やっぱりAマネージャって怖いんだ」という変な誤解を生みかねない、あまりにも拙い私のアウトプットでした。
しかし、Aマネージャは私の言葉を独自の「インプット力」で受け止め、こう「翻訳」して返してくれました。
「要するに、スポーツジムみたいな感じだよね?」
行く前は気が重いけれど、厳しいトレーニングを乗り越えれば爽やかな気分になり、終わった後は「やっぱりまた来よう」と思える。
私の感情の変遷を「スポーツジム」という身近な言葉に翻訳してくれたことで、その場にいたメンバーにも私の真意が短時間で伝わりました。
日常のコミュニケーションは、双方が「相手の意図を受け取るインプット」と「自分の考えを言語化して返すアウトプット」を繰りすループで成り立っています。
今回のやり取りが成立したのは、「厳しい問いかけを私がポジティブに受け止めている」というこれまでの対話のコンテキストがあったうえで、「Aマネージャのインプット力とアウトプット力が極めて高かったから」です。
もし相手が別の人なら、私の意図は全く伝わらず、ただの愚痴として処理され、Aマネージャに対する「怖い」という周囲の印象も変わらないままだったでしょう。
相手の優れたインプット力・アウトプット力や、「言わなくても伝わるだろう」というコンテキストに過度に依存した発信は、常に「伝わらないリスク」を抱えていることに気づかされました
この「インプットとアウトプットのループ」という構造は、昨今業務で使う機会が増えた「生成AI」を活用するプロセスとも、通じる部分があるように思います。
生成AIを適切に活用するアプローチとして、以下のようなプロンプトのテクニックが存在します。
- 要素の構造化:Role(役割)、Task(タスク)、Context(背景)、Output(出力)などの項目を明確に定義して指示を出す手法
- Few-shotプロンプティング:具体的な回答例を指示に含める手法
- Chain-of-Thoughtプロンプティング:論理的な思考プロセスを提示する手法
もちろん、こうしたプロンプトのテクニックや、AI特有の仕様を学ぶことも重要ですが、それ以上に大切なのは、自分自身の頭の中にある考えを適切に言語化するアウトプット力と、返ってきた結果の意図や妥当性を読み解き、次の対話へと繋げるインプット力という、人間としての土台の力です。
生成AIへの指示出しにつまずくケースを見ていると、ツールの習熟度などの要因もありますが、普段のドキュメント作成や対話における論点の整理や意図の的確な言語化に課題を抱えていることも少なくないと感じます。
逆に言えば、複雑な情報を理路整然とドキュメントにまとめられる人や、対話の中で論点を整理し、的確な言葉を選んで伝えられる人は、AIを活用する場面でもその力が活きてくると考えています。
そのような人たちは、自分の頭の中にある意図を的確に言語化して発信し、相手がどう受け取るかを想像・確認しながら、ズレがあればさらに適切な言葉へと変換してすり合わせていくというアウトプット力とインプット力に長けているからです。
昨今の生成AIの進化を見ていると、もしかすると近い将来、拙い指示でも意図を汲み取ってくれるようになるかもしれません。
そうなれば、私たちが自らのアウトプット力を必死に鍛えなくても、AIという道具自体は簡単に使いこなせるようになるでしょう。
しかし、相手の優れた翻訳に甘えきって、自らの意図を言葉にすることや相手の意図を適切に受け取ろうとする努力を放棄してしまえば、人間同士のコミュニケーションの豊かさまで失われてしまう気がします。
だからこそ、AIがいかに優秀になろうともそれに甘えることなく、自分の想いを的確に届ける「アウトプット力」と相手の言葉を正しく受け取る「インプット力」を磨き続けていきたい。
改めてそう感じた出来事でした。
2026年08月17日 (月)
青山システムコンサルティング株式会社
久保田一樹
