その測定結果は誰に見られているのか

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記事の執筆

高柳 充希
高柳 充希

高柳 充希

新卒で入社した商社にて、ユーザーとしてシステム導入の経験をする。業務改善と費用削減など経営と現場の改善策としてシステムの利活用に興味を持つ。自らがシステム開発に携わるためにSIerに入社。そこではSE、プログラマーとしてシステムの設計から開発、テストまで幅広く経験をする。より企業ごとのビジネスに適したシステム導入を支援するために青山システムコンサルティングに入社。

目的や目標への進捗や達成度を把握するために、企業ではあらゆる測定指標を設けています。「測定できないものは改善できない」という言葉に象徴されるように、測定結果は今後の活動方針を定める上で必要不可欠です。しかし、測定が人の行動に予期せぬ影響を与えることがある点を忘れてはいけません。

以前、営業職の知人が「活動が細かく測定されるようになってから、日々の業務が窮屈になった」と話してくれました。

彼の会社では営業管理システムを導入して、訪問件数や商談時間などを記録するようになりました。これにより、社員は評価や報酬に結びつく測定項目に対しては創意工夫をして短期的には成果を上げました。しかし、いつの間にか評価対象外の項目も含めて、他者との比較で劣らない結果になるように行動するようになったといいます。結果、個々人の測定指標はよい傾向を示すようになりましたが、事業全体の目標達成度は想定ほど芳しくなかったようです。

このように、測定の実施は一定の成果をもたらす一方で、過剰な意識や執着を生み出す力も持っています。そのため、測定指標を設ける前には「測定が人の意識と行動をどのように変化させるのか」を考慮しておくことが求められます。

では、測定のどのような要素が人に影響を与えるのでしょうか。

それは「測定結果を見る目」だと私は考えます。普段は意識していない行動が測定によって定量的に可視化されます。可視化によって、自分自身の行動を顧みる「内なる目」が気になります。そして測定結果が「上司の目」、「ライバルの目」、「周囲の社員の目」などから、どのように評価されるのかを意識せざるを得なくなります。誰の目に見られているかによって度合いは変わりますが、「見える化」が「見せる化」へと変容して行動が変わってしまうのでしょう。つまり、測定されていることを認知した時点で人の行動は変わり始めるのです。

そこで、測定結果の見られる範囲に着目して、「評価の有無」と「周囲への公開有無」の2軸における測定対象者への影響を考察してみます。

  • 評価の有無   :測定結果が報酬や人事評価に反映されるかどうか
  • 周囲への公開有無:測定結果が他者に見えるかどうか

①と②は共通して、結果が評価に直結するため、日々の改善と実行が促進されます。ただし、上司から測定対象者に対して結果を強く求めすぎると不正や目的の喪失に繋がるリスクがあります。①については②とは異なり、自分と他者との結果を周囲に比較されることになります。そのため、測定結果への執着がより高まる傾向があります。

③は、直接的な評価には繋がりませんが、周囲からの目が気になります。周囲からの賞賛や評判がいずれ評価者の心象に結び付く可能性があると意識するようになります。逆に、測定対象者全体の数値が芳しくない場合には、「できていないことが当たり前」と考え、努力が抑制されることがあります。

④では、評価に繋がらず、周囲からの影響も受けません。ただし、過去の自分を上回る成果を上げたいという意識が働きます。また、別の重要指標の結果が悪くなると見切りをつけたときには、自己評価への逃げ道として測定結果をよくすることに力を入れる可能性があります。

以上のように、測定結果の見られ方によって、人の意識と行動は大きく変わります。測定結果の公開範囲を考慮できれば、測定による人の意識と行動の向き先も想定しやすくなります。

測定実施前に心がけることとして、意識してみてはいかがでしょうか。

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2025年07月14日 (月)
青山システムコンサルティング株式会社
高柳充希