「プロジェクトの目的」が変革の邪魔をする

TEL:03-3513-7830|お問い合わせ

弊社メールマガジンで配信した「コンサルタントのつぶやき」です。
IT利活用のトレンドやお役立ち情報をメールマガジンでお届けしています。


記事の執筆

池田 洋之
マネジャー池田 洋之

マネジャー池田 洋之

前職では、ベンダーSEとしてITシステム開発業務に従事。 青山システムコンサルティング入社後は、システム化計画策定、RFP策定等のコンサルティング業務やPMOに従事している。特に、ITプロジェクトにおいてユーザーの立場でのプロジェクトマネジメントを多数経験しており、プロジェクトの成功に貢献している。

変革プロジェクトで、いつも思うことがあります。

たとえば、地方にある社員300名ほどの製造業。
長年、堅実にものづくりを続けてきた会社が、「このままではいけない」と変革に踏み出す。そういう場面に何度か立ち会ってきました。
プロジェクトの目的を伺うと、こんな言葉が並びます。

  • コスト体質を改善したい
  • 生産性を上げたい
  • 最新技術を活用したい
  • できるだけ早く新システムを導入したい
  • でも、ちゃんと業務改革もやりたい
  • でも現場の混乱は避けたい
  • 業務を標準化したい
  • これまでの強みは守りたい

どれも、その通りだと思います。
むしろ、全部できれば理想です。

ただ、現実はそう単純ではなく、これらを同時に最大化できるとは限りません。
ここにあるのは、能力不足というより、トレードオフの問題なのだと思います。

変革に潜むトレードオフ

「できるだけ早く導入する」と「業務を抜本的に見直す」は、時間軸でぶつかります。
「業務を標準化する」と「これまでの強みをそのまま残す」は、競争力をどう定義するかという点で、ぶつかります。
「最新技術を活用する」と「現場の混乱を避ける」は、変化をどこまで許容するかの問題になります。

どれかが間違っているわけではありません。
ただ、全部を同時に満たすのは、やはり現実的ではありません。

問題は、この現実をはっきりさせないまま進めてしまうことです。

「全部やる」と言いながら、場面ごとに優先順位が少しずつ変わっていきます。
その結果、設計は複雑になり、例外は増え、“変えたはずなのに、なぜか楽にならない”という状態が生まれます。

これは決して珍しい話ではありません。

変革は、足すことより減らすこと

変革の現場で本当に問われるのは、何を足すかではなく、どのトレードオフを受け入れるか、ということだと思っています。

早さを取るのか、完成度を取るのか。
標準化を進めるのか、個別対応を残すのか。
技術の先進性を優先するのか、現場の安定を優先するのか。

どれを選んでも、何かは手放すことになります。

その現実を正面から認め、選ばなかった側をきちんと手放せば、結果として、「減らす」という決断につながっていきます。

理想はいくらでも並びますが、前に進もうとすると、どこかでトレードオフを引き受けるしかありません。
その重さは、組織の中でさまざまな形で表れます。

私自身は、その現実にクライアントと共に向き合い続けたいと思っています。

そしてもう一つ思うのは、選ばれなかった側を、曖昧にしないことです。

例えば、ERPパッケージを導入するときには、既存業務をそのまま再現するのか、パッケージの標準機能に合わせて業務を変えるのか、どこかで必ず判断が必要になります。
そういうときは、まず現行業務とパッケージ標準の差分を整理します。そのうえで、「アドオンを作るほどではないが、現場としては困る」というケースがどれくらいあるのかを見ていきます。
最終的にFit to Standardで進める判断になることは多いのですが、そのときに「ではこの業務は現場で工夫してください」と置いていってしまうと、あとで必ず歪みが出ます。

なので、標準に合わせて一度やめる業務や、今回アドオンを作らないと決めた機能については、その理由と影響を整理して、プロジェクトの課題として残すようにしています。

場合によっては、「稼働後の第2フェーズで見直す」「半年運用してから再評価する」といった形で、いつ検討するのかまで決めておきます。
そうしておくと、現場にも「切り捨てられた」という感覚が残りにくくなります。

そのあたりも含めて、クライアントと向き合っていく仕事なのだろうと思っています。

変革の場に立つたび、そんなことをあらためて考えています。

この投稿をシェア

2026年03月16日 (月)
青山システムコンサルティング株式会社
池田洋之