弊社メールマガジンで配信した「コンサルタントのつぶやき」です。
IT利活用のトレンドやお役立ち情報をメールマガジンでお届けしています。
記事の執筆

宿谷 大志
ITテクノロジーで世界を革新することに興味を持ち、「不動産 × IT」を手掛けるソフトウェアベンダ企業に入社後、自社商品の SaaS アプリケーションのプログラム開発からプロジェクト推進、システムの保守運用を経験。ユーザー側の視座でITテクノロジーの活用に向き合いたいという思いからASCに入社。開発側の知識を活かしつつ、ユーザー側の業務に寄り添ったシステム構築のコンサルティングを行っている。
以前、幼少期に数年海外に住んでいた経験を持つ友人と
「読めない訳でも、理解できない訳でもないが、文章を読むのがずっと苦手なんだよね。」
という会話をしたことがあります。実は私も5歳まで海外で暮らしていたのですが、全く同じ感覚を持っていたため会話が盛り上がりました。文章を読む際、かなり集中していないと、3行読み進んでは1行戻るといったことになってしまい、なかなかうまく文章を読めないのです。一応補足しておくと、読解力や思考力、読書量といったものに問題がある訳ではないはずです。少なくともその友人は、一般的に言っても高いレベルの学業を修めていますし、思考も深く、仕事でも活躍しています。本もよく読む方だと思われます。
そして先日『ビジュアル・シンカーの脳 「絵」で考える人々の世界』(著:テンプル・グランディン、NHK出版、2023)という書籍に出会いました。詳細は書籍を参照していただければと思いますが、そこでは3つの思考タイプがあげられていました。
- 言語思考タイプ
- つながりがあるまとまったストーリーで世界を見る。
- 順序立てて理解するのが得意。時間感覚に優れる。
- 物体視覚思考タイプ
- 写真のように正確なイメージで世界を見る。
- 正確な形や位置を理解するのが得意。方向感覚に優れる。
- 空間視覚思考タイプ
- パターンと抽象的な概念で世界を見る。
- 物と物の関係を理解するのが得意。抽象感覚に優れる。
これらは、どれが優れているということではなく、それぞれに得意な状況が存在しています。また、一人ひとつのタイプに分類されるということでもなく、誰もが全てのタイプの要素を持っていて、その程度に違いがあるといった性質のようです。つまり、利き手みたいなもので、「利き思考タイプ」があるイメージなのかなと解釈しました。
そして友人と私はおそらくですが、視覚思考タイプのどちらかが利き思考タイプなのだと納得できました。
ちなみに、それぞれの利き思考タイプの割合がどのくらいなのか気になりますよね。しかし、残念ながらこれについてはまだ十分なデータがないそうです。ある研究においては、様々な家庭環境と知能指数の小学4年生から6年生の750人を対象に調査したところ、下記の割合だったそうです。
- 明確な空間視覚思考タイプ:3分の1
- 明確な言語思考タイプ:4分の1
- 混合タイプ:半分弱
また、一人の人の中でも変遷があるようで、5歳になるまでは視覚思考に大きく依存しており、6歳から10歳までの間にだんだんと言語思考への依存が増えていくといった研究もあります。
5歳まではそもそも十分に言語を扱えないことを考えれば視覚思考への依存が高いのは想像できますね。そこからそれぞれの利き思考タイプへ移行していく訳ですが、これが先天的なのか、後天的なのかは興味深いところです。友人と私の例からも、幼少期の経験がこの利き思考タイプに影響したのかどうか、個人的にもとても関心があります。
最後に、この利き思考タイプを紹介した理由を少しお話しして終わろうと思います。
私は仕事柄、資料を作って誰かに説明することが多くあります。その際、一般的にもよく言われることですが、構造化して、整理して伝えることが効果的です。そして、私自身の利き思考タイプの影響もあり、それを図として表現することが傾向的に多いです。多くの場合はそれで特に問題にはならないのですが、一定の割合で図だと伝わらない時があります。そしてそれは、私の経験では、「図だと伝わらない人」がいる印象です。
もちろん、図の出来の良し悪しが原因であることもありますが、そうではなく、そもそも図を認識するのが得意ではない人がいるということを知っておくと良いと思います。図はとても強力な表現方法で、プレゼンのノウハウでは推奨されることが多く、かつ、多くの場合とても有効なのですが、そうではない人もいることを知って、柔軟に対応出来る懐の深いビジネスパーソンだと素敵ですよね。
2025年05月19日 (月)
青山システムコンサルティング株式会社
宿谷大志