テクノロジードリブンという幻想の終焉

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■はじめに

エンジニアの方々から怒られてしまいそうなタイトルですが、
それでも私はテクノロジードリブンというのは、
テクノロジーが社会実装される過渡期における幻想であり、
今後は徐々にその言葉が使われなくなっていくと考えています。
外資系コンサル等を渡り歩いてきた山口周さんが書かれた
『世界のエリートはなぜ「美意識」を鍛えるのか?』(光文社新書)は、
非常に共感をするところで、エリートだけではなくエンジニアも同じく、
美意識を鍛えるべきだと私は強く思っております。

■テクノロジー先行やロジックの限界

リックライダーがAIの概念を提唱して以降、AIブームは何度も発生し、
シンギュラリティに端を発した近年のブームも終息を迎えています。
(私個人は、シンギュラリティ到来の真偽には言及しないスタンスですが、
 「とりあえず、AIやろうぜ!」は否定的に捉えています)
かと思えば、2000年代には著名な科学者が
「現実的にはコストの問題で不可能」と口々にした、
民間の宇宙旅行は私が寿命を迎える前に実現しそうです。
いずれにしても、私たちは未来を正しく予測できません。

それはなぜなのか?

その1つに、理系の人間が得意とする「テクノロジーだけで語る世界」と、
「存在する事実だけを積み上げたロジックの世界」に、
予測が引っ張られてしまうことが挙げられます。

■文系と理系の融合

この問題を解消するためには、現時点で存在している知識やセオリーを超えて、
「本当に善いこと」を見抜く「美意識」を自分の中に持ち、
その感覚で判断をする力が必要になります。
例えば、有名なトロリー問題*は、今の倫理観では一つの答えを導けません。
独自の倫理観を持てない人は、どこかでAIを扱いきれなくなることでしょう。
また、現在の新技術競争に疑問を持ち、本質的な問題と向き合わなければ、
枯れた技術を組み合わせることで効率良く開発して、
大企業よりも安価にロケットを飛ばすベンチャー企業である
スペースX社も出てこなかったでしょう。

「本当に善いこと」を考えるときは、テクノロジーやロジックよりも、
人間性と向き合う時間が大切になってきます。
これは、理系(テッキー)と対をなす文系(ファジー)の領域で学びます。

長くなってきましたので、何を申し上げたいのか、端的にまとめさせていただくと、
どちらかが「ドリブン」な関係ではなく、融合が必要である、ということです。
理系と文系の融合については、スコット・ハリーが書いた
『FUZZY-TECHIE』の訳本(東洋館出版社)が出ていますので、
そちらも参考にしていただければ、より溜飲が下がるかと思います。

*「ある人を助けるために他の人を犠牲にするのは許されるか?」という思考実験。

■まとめ

「適者生存」の原則に従えば、時代の潮流が本格的に
「テクノロジーの民主化」を迎える中で、
変化ができずに溺れてしまうのは、エンジニアの方々も同じです。
さらに、デジタルトランスフォーメーション(DX)が加速していく中で、
経営とテクノロジーの垣根も崩れていきます。
エンジニアに美意識が求められる世の中になっていく中で、
その内容を判断する経営者は自分なりのさらなる「善さ」の感覚、
つまり高い美意識を持つことが望まれることでしょう。

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2019年12月23日 (月)
青山システムコンサルティング株式会社
長谷川 智紀