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2015年に出版した
『業務効率UP+収益力UP 中小企業のシステム改革』幻冬舎 (2015/9/18) より
書籍内のコンテンツをタイトルごとに公開いたします。

コンテンツの最後に、コンサルタントのコメントを追加しておりますので、合わせてご覧ください。


P.38~ 

第1章 ソフト更新、業務フロー変更 
          ── 絶え間なく見直しを迫られる社内システム

ERPシステムの流行と挫折

ITシステムには流行と衰退があります。

本来、ERPなどの業務システムとは、自社にとって使い勝手が良ければ、流行とは無縁であってよいものです。しかし、メーカーのサポートから逃れられない以上、どうしても環境に左右されずにはいられません。

そして、ことITシステムに限って言えば、流行に振り回されるとろくなことがないのです。

たとえば、1990年代の後半に大流行した欧米のERPシステムには、大きな問題がありました。

ERPが企業に広く受け入れられたのは、経営者にとって好ましいシステムだったからでした。販売や生産や人事の現場における細かい数字を、ほとんどリアルタイムで見ることができるERPシステムは、経営者が経営判断を行うときにおおいに助けになるツールとして売り込まれました。

最高意思決定者である経営者に向けて「今日一日の販売の損益が、その日の終わりには自動的に集計されて見られるようになるんですよ」などと売り込めば、飛びついてもらえたからです。

しかし、これにはいくつか問題がありました。たしかに、ERPシステムは、数字さえ入力してもらえれば、自動的に損益を計算して、分析や表示をしてくれるシステムですが、そのためには人力で、できるだけ早く数字を間違いなく入力する必要があったのです。

名だたるERPシステムを導入した企業では、これまでのシステムに比べて、現場にかかる入力の負荷は3倍になると言われました。

そのため、特に日本企業では、現場の担当者の不満が大きく高まりました。入力作業とは、いわば単調な事務報告作業です。そのための時間が3倍になって、現場の士気が上がるはずもありません。経営判断のために必要だと説明しても、なかなか納得してもらえませんでした。

大型汎用機を使ったレガシーシステムでは、ユーザー企業に合わせて徹底的に操作性がチューニングされています。ですから、現場の担当者にとっては入力が簡単で使いやすいシステムになっていました。しかし、欧米のERPは、使いやすさよりも機能を重視していました。そのため、さまざまなタグによる仕分けが多く、現場の担当者の負担が非常に大きくなりました。

また、欧米のERPは、生産管理や販売管理の面で、日本の商習慣に合わないところもありました。

一例を挙げれば、日本では1カ月分をまとめて請求することが多いのですが、それでは差異が生じた際の修正が遅くなり、毎日の損益が正確に把握できなくなります。そこで、欧米のERPでは都度請求を推奨しているのですが、システム上ではそのほうが便利になるからといって、長年の商習慣を簡単に変えられるものではありません。

これに限らず、欧米の商習慣をもとにしたERPシステムは、日本企業にとっては使いにくいことが多く、結局、実務上は会計システムだけの利用にとどまる企業が多かったと聞いています。

しかし、ERPのメリットは、全社的にシステムを統合することで、さまざまな経営資源の数値を一元管理できることにあるはずです。会計システムや人事システムなど、一部分だけの導入ではERPシステムの良さを発揮することはできません。

販売、生産、人事、会計などのすべてのモジュールを導入して、初めてERPシステム(統合基幹業務システム)の意味があるのです。

当時、バックエンドの会計業務や給与計算業務だけをシステム化して、フロントの現場の業務システムは従来のまま残した企業は少なくありませんでしたが、それで本当にERP導入の意味があったのかどうか、私たちは疑問に思っています。

流行に乗せられて、使いにくいERPシステムを導入したものの、使いこなすことができず、結局、不便になったという企業がいくつもありました。

おそらく、2000年問題に迫られたシステム部門が、十分に社内のコンセンサスを得ることなく、ユーザー部門をたきつけてERPを導入したケースが多かったのではないかと推測しています。

もう一つ、日本でERPの導入が進まなかった理由があります。

現場の入力作業が大変になるのは、欧米も日本も同じことです。しかし、職種別採用を行っている欧米では、入力専門のオペレーターを雇うことで、現場の不満を解消することができました。

しかし、職種別採用ではなく、また解雇規制が強いために労働者の権限が強い日本では、現場の不満を押し切ってERPを導入することができませんでした。

単純作業従事者を雇って「新しいERPシステムへの正確な入力は、皆さんの職務の範囲です。嫌なら辞めてください」と指示命令ができてしまう欧米の会社と、現場でバリバリ働いているプレーイング・マネージャーが、自らシステムへの入力作業も行っている日本の会社とでは、ERPシステムに対する抵抗が大きく異なっていたのです。逆に、レガシーシステムは、そのような日本企業の慣習にも対応したシステムになっていました。

たとえば、ERPの会計システムは、入力時に、担当者が自分で勘定科目を仕分けして入力するようなシステムになっています。しかし、これでは簿記の専門知識を持つ担当者しか入力することができません。

一方、レガシーシステムでは、伝票ごとに入力画面が分かれていました。接待交際費や本・雑誌などの精算をしたければ、接待交際費や本・雑誌などのそれぞれの専用入力画面を利用すればよいので、間違えようがありません。誰でも簡単に入力できるのが、レガシーシステムの良い点でした。

高価である代わりに、かゆいところに手が届くレガシーシステムが廃れて、安価なオープンシステムの時代になるにつれて、ITシステムはどんどんと難しく、使いづらいものになっていったのです。


ITコンサルタントのコメント(2022年2月3日)

入力部分だけを見ると、ERPは以前に比べて使いやすくなったのではないでしょうか。

海外製のERPであっても国内対応が進んできていることや、国産の製品が開発され、業界全体が成熟してきたことが要因でしょう。また、当時は入力作業が手間になることが問題になっていました。最近では、入力を支援する仕組みを活用した省力化が進んでいるように感じられます。
さらに、単純な入力作業はAIによる担当分野になりつつあります。画像解析技術とAIの自己学習技術の発展によって、現場での単純入力作業はなくなっていくことでしょう。担当者は、AIによる入力内容が正しいかどうかを確認する役割を担うか、より複雑でAIによる代替が困難な入力を行う業務を担うことになっていきます。

これもまた、IT業界の流行なのかもしれません。

ある程度の流行りや廃りがあっても、情報システムを活用して業務内容を改善するという大きなテーマは変わりません。ERPであってもAIであっても、「流行っているから」と飛びつくのではなく、まずは情報システムを使いこなせるのか検討し、活用法から考えてみてください。

2022年02月03日 (木)

青山システムコンサルティング株式会社

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