損失回避は仇となる??

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損失は誰しも避けたいです。しかし、その意識が強いために意思決定を誤る可能性もあります。

今回はその一因となり得る損失回避性について紹介します。

 

早速ですが、皆さんに質問です。あなたは問題1と2において、それぞれどちらを選択しますでしょうか。

問題1

 (1)確実に9万円もらえる

 (2)90%の確率で10万円もらう

問題2

 (1)確実に9万円失う

 (2)90%の確率で10万円失う

 

ダニエル・カーネマンとエイモス・トベルスキーによって展開された「プロスペクト理論」よると、利得と損失のどちらも起こり得る場合には、極端にリスク回避的な選択が行われます。しかし、悪い選択肢しかないときは確実な損失を回避するためにリスクを追求するようになるようです。このように、損失を避けようとする人間の思考の習性を損失回避性と言います。

書籍「ファスト&スロー」によると、上記問題2に対して被験者の73%が(2)を選択しております。(2)を選択した方は、追加で1万円を失う覚悟で損失回避できる10%の可能性を選んだはずです。一方、問題1では(1)を選び、10%のリスクを避けた方が多いのではないでしょうか。しかし、実際には問題1(2)と問題2(2)における損得の期待値は同じです。つまり、確実な損失を避けるためにはリスク許容度が高くなってしまうのです。これが損失回避性の恐ろしさです。

 

この損失回避性はビジネスにおける意思決定でも散見されます。

問題3

あなたはプロジェクトの責任者です。予算10人月のプロジェクトにおいて、現在9人月の工数を投じております。しかし、根本的な問題が見つかり成功の目途が立っておりません。皆さんは以下のどちらを選択しますでしょうか。

 (1)プロジェクトを断念する

 (2)1人月追加投入して成功の可能性を探る

 

設問に記載した「根本的な問題」の内容にもよりますが、心理的には(2)を選びたくなるでしょう。なぜなら、プロジェクトを断念することは9人月の確実な損失が発生してしまい、周りからの評価も失ってしまうからです。プロジェクトを断念することが正解ではありませんが、小さな可能性に賭けることは得策とは言えません。

大きな決断をする際には個人の裁量で決定することが少ないですが、個人の裁量でスピーディーに判断しなければならない場面が存在します。個人で意思決定を行う際には損失回避の心理が大きく働き、組織全体の最適な方針検討を阻害する可能性があります。責任を持つ方や推進する立場にある人は損失回避性を理解するとともに、客観的な意見に耳を傾けることを意識すべきでしょう。逆に周りの人が損失回避の影響を受けていないのかを気に掛けることも必要です。

皆さんの意思決定に少しでも役立てて頂ければ幸いです。

2021年11月15日 (月)

青山システムコンサルティング株式会社

高柳充希